糖尿病性腎臓病に対する創薬研究の取り組みとSGLT2阻害薬による病態進展抑制の可能性

  • 小島 直季
    大正製薬株式会社 医薬研究本部 Discovery研究所 薬理第2研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Challenges in drug discovery research and the effects of SGLT2 inhibitor against diabetic kidney disease

抄録

<p>糖尿病性腎臓病は糖尿病合併症の一つであり,最終的には腎不全に進行して血液透析などの腎代替療法が必要になる疾患である.血糖コントロールなどの薬物治療により,糖尿病性腎臓病の発症・進展を抑制することは重要であるが,現在の治療方法では腎障害の進行を完全に抑制することが出来ない.そのため,糖尿病性腎臓病に対して高い有効性を示す医薬品創出が求められているが,進行性のタンパク尿排泄,糸球体硬化病変,腎間質線維化,糸球体濾過量低下など,糖尿病性腎臓病患者と同様の進行性の腎障害を示すモデル動物が限られていることが創薬研究の課題の一つである.この課題によって糖尿病性腎臓病の病態生理が未だ十分に解明されていないことも,新規の医薬品創出の障壁となっていることが考えられる.SGLT2阻害薬は,腎臓の近位尿細管におけるグルコース再吸収を抑制することで,尿中へのグルコース排泄を促進して,血糖低下作用を発揮する医薬品である.このSGLT2阻害薬の糖尿病性腎臓病に対する有効性を検証するため,糖尿病性腎臓病患者と同様の高度な進行性腎障害が認められる2種類のモデル動物を用いてSGLT2阻害薬であるルセオグリフロジンの薬効を検証した.その結果,ルセオグリフロジンは単独療法またはACE阻害薬との併用療法により,これらモデル動物で認められた腎障害の進展を抑制したことから,SGLT2阻害薬が糖尿病性腎臓病の有効な治療オプションとなる可能性が考えられた.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 157 (4), 249-253, 2022

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (17)*注記

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