灸に関する有害事象の文献レビュー

DOI
  • 古瀬 暢達
    大阪府立大阪南視覚支援学校 森ノ宮医療大学鍼灸情報センター
  • 山下 仁
    森ノ宮医療大学鍼灸情報センター

抄録

【目的】灸に関する有害事象を調査し、灸施術の安全性向上のための方策を検討すること。<br> 【方法】医中誌 Web および PubMed を用いて、灸に関する有害事象(因果関係を問わず灸施術中または灸施術後に発生した好ましくない医学的事象)症例報告を検索した(2021 年 5 月検索)。対象期間は、1980 年以降とした。<br> 【結果】38文献98症例が収集された。内訳は、皮膚腫瘍15文献15症例、水疱性類天疱瘡4文献5症例、熱傷 4 文献 4 症例、喘息発作 3 文献 3 症例、症状増悪 2 文献 60 症例、潰瘍 2 文献 2 症例、壊疽性膿皮症 2 文献 2 症例、痂皮 1 文献 2 症例、狭心症様の胸痛 1 文献 1 症例、ケブネル現象 1 文献 1 症例、下腿皮膚壊死 1 文献 1 症例、小腸と大網の癒着 1 文献 1 症例、総腓骨神経麻痺 1 文献 1 症例であった。年代別では、1980 年代 12 文献 72 症例、1990 年代 10 文献 10 症例、2000 年代 12 文献 12 症例、2010 年代 4 文献 4 症例であった。<br> 【考察】多くの症例が深達性Ⅱ度以上の熱傷を由来とする有害事象であり、熱量の大きい施術を避けることがリスクマネジメントとして有用と考えられた。皮膚腫瘍が多く報告されており、過剰な刺激を同一部位に長期間継続することによる施灸部の癌化に注意が必要である。アレルギー、自己免疫疾患、易感染性、喘息等患者の基礎疾患や体質に由来するものが報告されていた。事前の問診によりこれらを把握するとともに、施灸部に異常がみられた場合は、灸施術を中止し刺激量や継続の是非を再考するとともに、専門医への受診を勧めるべきである。また、自己施灸による有害事象も報告されていたため、過剰な灸施術をしないように患者指導を行うべきである。年代別では、2010 年代の症例報告数が少なかった。<br> 【結語】近年、灸に関する有害事象の報告は減少していたが、報告された症例から学び安全教育に反映していくことが重要と考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390011231105066112
  • DOI
    10.32255/jjsop.46.2_95
  • ISSN
    24345644
    21875316
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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