VO<sub>2</sub>ナノ薄膜におけるモット転移温度の面内単軸ひずみ負荷応答

  • 河村 啓
    京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻
  • 角田 純平
    京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻
  • 服部 梓
    大阪大学 産業科学研究所
  • 澄川 貴志
    京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Response of Metal-Insulator Transition Temperature of VO<sub>2</sub> Nano-Thickness Thin Films to Mechanically Applied In-Plane-Single-Axis Strain

抄録

<p>バンド理論においては導電性があると予想されるにもかかわらず,結晶中の電子が反強磁性秩序を形成するため絶縁性を示す物質をモット絶縁体という1).モット絶縁体の特徴は,温度変化により絶縁体から金属へ相転移することであり,この現象をモット転移という.モット転移は,低温状態と高温状態における結晶構造の違いに起因することが知られており2),このとき生じる原子の幾何学的位置関係の相違が電子の反強磁性秩序に大きく影響し,モット転移が起こる.代表的なモット絶縁体として,二酸化バナジウム(VO2)が挙げられる.VO2では,温度変化による相変態に起因して結晶中のV-V dimer長さが変わることによりモット転移が起こることが示唆されている3).すなわち,外場からのひずみの印加はV-V dimer長さに影響を及ぼし,モット転移の挙動が変化することが考えられる.本研究では,TiO2(001)単結晶基板上に成膜したVO2単結晶ナノ薄膜に対して,4点曲げ試験を実施し,モット転移に及ぼすひずみの影響を実験的に明らかにすることを目的とする.</p><p>供試材は,エピタキシャル成長によりTiO2(001)単結晶基板(厚さ5mm)上に成膜された膜厚18 nmのVO2単結晶ナノ薄膜である.この薄膜では,V-Vdimerは基板の面外垂直方向に向いている.基板を正方形(10 mm×10 mm)に切断して,エポキシ接着剤を用いて短冊状(厚さ1.0 mm,幅14mm,長さ80mm)のSUS板上に接着し,SUS板に対して4点曲げ負荷を与えることで薄膜に面内単軸圧縮ひずみを与える.このとき,VO2単結晶ナノ薄膜の<1-10>方向はSUS板の長手方向に対して平行である.薄膜の抵抗値は,基板上のVO2単結晶ナノ薄膜両端部に配置された電極(白金(Pt))を介して,4端子法によって測定する.図1は,0%,0.04%,および0.07%の単軸圧縮ひずみを与えた際の抵抗値と温度の関係(R-T曲線)を示す.0.04%の圧縮ひずみにより,R-T曲線は無負荷の場合に比べて約0.3℃高温側へ移動する.0.07%の圧縮ひずみにより,R-T曲線はさらに約0.4℃高温側へ移動する.図2は,モット転移温度中にある14.1℃で温度を一定にし,圧縮ひずみを,0%~0.07%に上昇させた際の抵抗値とひずみの関係を示す.抵抗値はひずみに対して十分な感度を有していることから,ひずみセンサとして用いることができることがわかる.</p>

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