環境攪乱因子はレトロトランスポゾンを介して継世代エピジェネティック遺伝(Transgenerational Epigenetic Inheritance ; TEI)を誘発する
書誌事項
- タイトル別名
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- Environmental disruptors could induce transgenerational epigenetic inheritance (TEI) via retrotransposons
抄録
<p> 環境攪乱因子による生物のエピゲノムの変化が直接その影響を受けていない世代にまで継承される現象「継世代エピジェネティック遺伝(TEI)」について、植物や線虫などではすでにいくつかの報告があり、その有力な機序としてレトロトランスポゾン(RTs)が介在するものがある(Teixeira et al., 2009, Ashe et al., 2012)。哺乳動物においても農薬ビンクロゾリンやメトキシクロルによるラットのF3世代への影響(Anway et al.,2005)などを嚆矢として、次々と報告がなされ、そのメカニズムについて様々な検討がなされている。RTsのエピジェネティック制御機構の解明の進展とともに、それが哺乳動物のTEIのメカニズムへも深く関わっている可能性がある(Casas, 2020)。ヒ素などにおいてそれを示すような実験結果も報告されている(Nohara et al.,2020)。RTsは外来のレトロウィルス由来の遺伝子がゲノム上に組み込まれたものと考えられ、マウスではゲノム全体の約10% 近くを占める。DNAメチル化などエピジェネティック制御は、受精‐胚発生期、始原生殖細胞期にゲノム全体で脱メチル化‐再メチル化のリプログラミングが起きるが、RTsではそれをエスケープする機構が存在する(Seisenberger, 2013)。また、LINE-1レトロトランスポゾン由来の逆転写酵素がRNAに新規にコードされた情報を拡散し、精子細胞は、体細胞由来の遺伝情報の受け手となり世代を超えたベクターとして働き、その情報は次世代に受け継がれていく可能性がある(Spadafora, 2017, Sciamanna et al.,2019)。今回の発表では、これらのRTsとTEIメカニズムの関係につきレビューする。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), P-212-, 2022
日本毒性学会