rasH2-Tgマウスの病理学的背景と特徴的病変について

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  • Pathological Background and Characteristic Lesions in rasH2-Tg Mice

抄録

<p>S1Bガイドラインの改定案が2021年に提出され,rasH2-Tgマウスを用いたがん原性試験の実施が具現化してきた.しかし,現状はrasH2-Tgマウスに関する認識が乏しく,背景データや実施経験の不足を理由に実施を躊躇することが少なくない.そこで今回,rasH2-Tgマウスへの理解を深めるため,病理学的背景と特徴的病変について紹介する.rasH2-Tgマウスを用いた26週間がん原性試験は,1群雌雄各25匹で,3用量群に加え,陰性対照群(NC)と試験系の有効性確認のためMNUやウレタンなどの既知の発がん物質を投与する陽性対照群(PC)を置くことが標準である.弊社背景データ(雌雄各50例)では,26週時点の生存率はNCで98% / 94%(雄 / 雌),PC(MNU)で6% / 22%であった.体重の推移についてはNCとPC間に顕著な差はなかった. </p><p>剖検では,NCの少数例で皮膚の乳頭状腫瘤,脾臓及び肺の腫瘤が観察された.PCではほぼ全例で前胃の腫瘤,半数以上で皮膚の乳頭状腫瘤及び胸水の貯留,胸腺,リンパ節及び脾臓の腫大が観察された.また脾臓及び肺の腫瘤も少数例で観察された. </p><p>病理組織学的には,NCで脾臓の血管腫及び血管肉腫,肺の腺腫及び腺癌,皮膚の扁平上皮乳頭腫,角化棘細胞腫及び扁平上皮癌が少数例で観察され,これらがrasH2-Tgマウスの自然発生腫瘍の特徴と考えられた.PCではほぼ全例で前胃の腫瘍(扁平上皮乳頭腫又は扁平上皮癌)がみられ,次いで,リンパ造血器系の悪性リンパ腫が高頻度に観察された.また,半数程度で皮膚の腫瘍(扁平上皮乳頭腫,角化棘細胞腫又は扁平上皮癌)が,さらに少数例で膣の扁平上皮乳頭腫及び子宮の腺腫が観察された.一方.脾臓の血管腫及び血管肉腫,肺の腺腫及び腺癌の発生数はNCとPCの間にほとんど差はなかった.講演ではこれら背景データについて詳細に報告する.</p>

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  • CRID
    1390011716213358592
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_s7-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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