頭頸部がん治療の進歩 ―頭頸部がん治療におけるヒトパピローマウイルスの役割―

  • 加藤 久幸
    藤田医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

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抄録

<p> 頭頸部がんの中でも特に中咽頭癌扁平上皮癌 (OPSCC) に HPV 関連癌が多い. HPV 関連 OPSCC は喫煙や飲酒がリスク因子となる HPV 非関連 OPSCC とは臨床的特徴が異なり, 治療反応性や予後が明らかに良好なことから異なる癌と考えられている. 実臨床では治療効果や予後を反映した病期分類が必要とされ, 2017年に p16 発現により層別された TNM 病期分類 (UICC 第8版) が発刊された. その結果, HPV 関連 OPSCC の病期分類は, 第7版では大半を占めていた stage IV が遠隔転移のある症例のみとなり, T4, N3 症例以外は stage I または II に分類されることになった. しかし, 現状では HPV status による治療の変更はエビデンスに乏しく推奨されていない. そこで, 比較的若年で長期生存が得られる HPV 関連 OPSCC 患者の治療成績および QOL の向上を目的とした強度低減治療の確立を目指した臨床試験が多く行われている. その手法として, ① 化学放射線療法 (CRT) における放射線量低減と化学療法の省略, ② CRT におけるセツキシマブの併用, ③ 一次治療としての放射線治療と経口的ロボット支援下咽喉頭手術 (TORS) の比較, ④ 経口切除後の補助療法の強度低減, ⑤ 導入化学療法の治療効果に応じた放射線量低減などの試験が行われている. また, 新しい試みとして CRT と免疫チェックポイント阻害薬併用放射線療法の比較試験も始まっている. 本稿では HPV 関連癌の動向や臨床的特徴, TNM 病期分類の変更点, 臨床試験の動向について概説する.</p>

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