『チャパ宗義書』における心不相応行の典拠

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  • On the Source of <i>Cittaviprayuktasaṃskāra</i> in Phya pa’s<i> grub mtha’</i>
  • On the Source of Cittaviprayuktasamskara in Phya pa's grub mtha'

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抄録

<p> bDe bar gshegs pa dang phyi rol pa’i gzhung rnam par ’byed pa(『チャパ宗義書』)はチャパ・チューキセンゲ(Phya pa Chos kyi seng ge, 1109-1169)によって著された後伝期最古の学説綱要書の一つである.『チャパ宗義書』では四学派(毘婆沙師,経量部,唯識派,中観派)の学説が五基体(shes bya’i gzhi lnga ba)に基づいて説かれる.この五基体とは色(gzugs),心(sems),心所(sems las byung ba),心不相応行(mi ldan pa’i ’du byed),無為(’du ma byas)である.本稿ではこの中の心不相応行を考察する.</p><p> 毘婆沙師章の中で23種の心不相応行が列挙され,その他の章でも全てが列挙はされないものの心不相応行の総数が23種であることは承認されている.この23種の心不相応行は唯識派章では二つに分類され,末尾の9種は副次要素(cha ’thun dgu)と呼ばれる.</p><p> チャパはこの心不相応行の分類方法の典拠に言及していないが,類似した分類がペルツェク(dPal brtsegs, 9世紀)等によって編纂された仏教語釈集Chos kyi rnam grangs kyi brjed byang(『法門備忘録』)の中に見られる.『法門備忘録』は『チャパ宗義書』で「副次要素」として位置づけられた9つの心不相応行を「de lta bu’i cha dang mthun pa」と呼び,『チャパ宗義書』と同様に心不相応行を二種に分類する.確かにPañcaskandhaka(『五蘊論』)も同様に心不相応行を二種に分類するが,副次要素に含まれる法の数は『五蘊論』の諸注釈の中で一定していない.したがって,心不相応行を二種に分類し,且つ副次要素を9つと数える考え方は『法門備忘録』が初出であり,『法門備忘録』が『チャパ宗義書』における心不相応行の分類に影響を与えている可能性を指摘できる.</p>

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