タルマリンチェン注に基づくanyāpohaの分類について

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  • On the Classification of <i>anyāpoha</i> Based on Dar ma rin chenʼs Commentary
  • On the Classification of anyapoha Based on Dar ma rin chen's Commentary

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抄録

<p> 仏教論理学を確立したディグナーガ(480-540)により言語理論,通称アポーハ論(apoha)は提唱された.そして,仏教論理学を大成したダルマキールティ(600-660)の孫弟子にあたるシャーキャブッディ(660-720)は,ダルマキールティ著『プラマーナ・ヴァールッティカ』(以下,PV)に対する注釈の中でアポーハを3分類している.より後代に活動したシャーンタラクシタ(725-788)もまた,自身の著作『タットヴァサングラハ』においてアポーハの3分類について言及している.しかし,このアポーハの3分類の起源は未だ明確ではない.</p><p> ゲルク派のチベット人注釈家であるタルマリンチェン(1364-1432)は,ディグナーガ著『プラマーナ・サムッチャヤ』(以下,PS)およびダルマキールティ著PVに対し注釈を書いており,両注釈においてアポーハの3分類に言及している.</p><p> 本稿では,このPSとPVに対するタルマリンチェン注を参照することで,ディグナーガとダルマキールティの二者と,アポーハの3分類との関係について検討し,アポーハの3分類の起源を明らかにする手がかりとした.</p><p> タルマリンチェンは,PSおよびPVへの注釈において,アポーハの3分類を「他の排除の定義が分類されたもの」と捉え,その概念を重要視していた.PSへの注釈では,3分類されたアポーハをディグナーガのアポーハの概要と位置付けていたが,具体的なPSのテキストとの関連は示していなかった.一方,PVへの注釈では,ダルマキールティのPV 1.169の語釈からアポーハの3分類が導かれると捉えており,これはシャーキャブッディのPVへの注釈には見られない捉え方である.タルマリンチェンはアポーハの3分類とダルマキールティのPVとの関係性を強調することで,アポーハの3分類が注釈者シャーキャブッディではなくダルマキールティ自身により提唱されているということを強調していると考えられた.</p>

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