伊豆諸島における降水量の島内分布と島ごとの比較

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Precipitation distribution within an island over the Izu Islands and its inter-island comparison

抄録

<p>1. はじめに</p><p> 伊豆諸島には日本国内の他地域に見られない特徴的な降水の季節変化がある.梅雨・台風による降水ピークに加えて,八丈島を中心に早春季の南岸低気圧の頻繁な通過に伴うと思われる,比較的明瞭な第三の降水ピークがある.その降水量は国内他地域で水害が発生する梅雨・台風季のレベルに相当する.このことは気候変動によって早春季にも水害に備えねばならなくなる可能性を示唆する. </p><p> 伊豆諸島は島の中心部に急峻な火山を擁し,その降水分布は地形に応じて変化することが予想される.気候変動に伴う降水の変化を予測するためには,まず,地形に応じた降水の水平分布を把握することが必要である. </p><p>本発表では,東京都建設局による稠密な降水観測網のデータを用いて,伊豆大島・神津島・三宅島・御蔵島・八丈島各島内の降水の水平分布の特徴を報告する.</p><p></p><p>2. データと解析手法</p><p> 東京都建設局による,時間分解能1分の降水量観測データを用いた.まず,1分降水量データを,時間降水量に集計した.欠測を全く含まない時間のみを正常値として時間降水量を定義した.月降水量は,90% 以上の時間が正常値の場合に定義した.年降水量は,全ての月降水量が定義される年について定義した.島ごとに,島内全観測点で月(年)降水量が定義される月(年)を対象として,月(年)降水量気候値を定義した.さらに,島内降水の類似性を,島内観測点間の月降水量 Kendall の順位相関係数を用いて評価した.解析期間は 2014 年 4 月から 2021 年 3 月の 7 年間である. </p><p></p><p>3. 結果</p><p>年降水量気候値は,島内観測点の最小値に対して最大値は,大島・三宅島・御蔵島で 1.5 倍,神津島・八丈島で 1.15 倍程度である.大島では観測点間の降水量の大小関係は季節によって大きく変わらず(図 1a),ほとんどの月で波浮(オレンジ色)が最少,半分の月で津倍付(青)が最大である. </p><p>島内観測点間の月降水量の類似性は,三宅島で低かった.観測点間の距離が小さいほど類似性が高くなると考えられるが,三宅島では距離に比べて相関係数が全体的に低い(図 2). </p><p></p><p>4. まとめと今後</p><p> 月降水量の島内での類似性が三宅島で特に低かった.三宅島では月降水量の年々変動が大きく,観測点間の降水量の大小関係に季節性が強い(図 1b).今後はこのような島の間の違いが生じる原因とともに,短時間スケールでの降水分布についても調べる予定である. </p><p></p><p>謝辞: 本研究は科研費(21K01018)および,JAXA EORA3 共同研究「伊豆・小笠原諸島における GPM 観測および GSMaP データの地上検証」の支援を受けた.データは東京都建設局より提供を受けた.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012169713404288
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_93
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ