霊長類北限環境に生息するニホンザルの排泄物メタゲノム解析による食性の解明

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タイトル別名
  • A study of the food habits of the Japanese macaque <i>Macaca fuscata</i> inhabiting in the northernmost nonhuman primate habitat via a metagenomic fecal analysis

抄録

<p>非ヒト霊長類の多くは低緯度の熱帯および亜熱帯地域の森林に生息し、主に果実や昆虫などを食べて生活する。一方、非ヒト霊長類中でニホンザルのみが、下北半島を北限とする積雪・落葉・気温低下により果実や昆虫を得られなくなる冬季を有する高緯度地域にも生息している。本研究では、そのようなニホンザルの特異的高緯度環境適応を可能にした要因を明らかにするために、2012年より下北半島に生息する野生ニホンザルの糞便を収集してきた。初秋季および冬季に得たニホンザル糞便試料よりDNAを抽出し、PCR等によるターゲット選択をすること無くOxford Nanopore社のMinIONシステムによる塩基配列決定を行った。その結果得られた計111.1メガ塩基対となる131,120 リード配列データを国際塩基配列データベースに対して相同配列検索を行い、各リード配列の由来生物を推定した。さらに、霊長目以外の真核生物に分類されたリード配列の分類群頻度解析を行うことで、秋季と冬季において下北半島生息ニホンザル集団が摂取している主要食物を推定した。その結果、秋季中は、下北半島に自生しているマタタビ、ヤマブドウなどの高カロリー食を大量に食べ、冬季はアジサイやニシキギなどに依存しているということが示唆された。また、タンパク質源として、海産魚も摂っている可能性や、住血胞子虫などの寄生虫に冒されている可能性も示唆された。これらの結果に基づき、ニホンザルの高緯度地域への適応要因について考察する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012191593596544
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_64
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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