金華山島の野生ニホンザルにおいて第一位オスの群れへの頻繁な出入りが群れのまとまりの変動に及ぼす影響の検討

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  • Does the frequent separation of the alpha male from the troop influence the cohesion of the troop in a wild troop of Japanese macaques on Kinkazan Island?

抄録

<p>群れの空間的なまとまりは霊長類の社会システムを特徴づける重要な要素であり,その変動に影響を与える要因を明らかにすることは霊長類社会の理解に不可欠である。本研究では,宮城県金華山島のニホンザルB1群で観察された第一位オス(TY)の群れへの頻繁な出入りという特異な行動と,群れ内で確認されたメスの割合の変動の関連を調べることで,第一位オスの動きがニホンザルの群れのまとまりに与える影響を定量的に検討した。調査は2018年10月から2022年3月までの間に計418日間行った。2019年9月から2021年12月までの期間中,TYは平均して10日に0.99回の頻度で群れを出入りし,この期間中に彼が群れで確認された日数割合(143/260,55%)はそれ以外の期間(126/126,100%)に比べて著しく低くなった。TYの出入りがあった期間中は各観察日に確認できたメスの割合も顕著に低くなっており,中でも特にTYが群れで確認できなかった日にはその割合が低下した。この傾向は特に交尾期に顕著であった。以上の結果は,TYの群れへの出入りが群れのまとまりの変動に関連していたことを強く示唆する。そこで,そのメカニズムを検討するため,各メスが群れで確認できなくなる際にどのような要因が影響したかを調べたところ,交尾期にメスが群れで確認できなくなる確率はTYが群れを離れた日に有意に上昇していた。この結果は,一部のメスが群れを離れるTYに追随したことで,確認できるメスの割合が減少したことを示唆する。加えて,メスが群れで確認できなくなる確率は,オスからメスへの攻撃の頻度が高い日の翌日ほど有意に高くなっていた。この結果は,メスがオスの攻撃を避けるために群れを離れたことも示唆しており,実際に群れで確認されない割合が高かったメスほど群れ内でオスの攻撃を受ける頻度は低くなっていた。今後は,他の調査地でも第一位オスの動きやオスの攻撃が群れのまとまりに影響を及ぼすことがあるのか検証されることが期待される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012191593598080
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_18
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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