2021年度冬季におけるニホンザルの洞窟利用

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  • Cave use by Japanese monkeys in Kurobe Gorge of eastern Toyama Prefecture during 2021 winter.

抄録

<p>富山県東部の黒部峡谷の鐘釣には複数の鍾乳洞が存在し、厳冬期に防寒のためにニホンザルが洞窟を利用する。筆者らは、二箇所の洞窟(サル穴,ホッタ洞)を対象に、自動撮影カメラによる行動観察、糞内容物の分析、および自動温度ロガーによる観測を実施し、洞窟利用を促す気象要素,洞窟への出入りを含む洞内での行動、および冬季食性についての検討を進めている。この発表では、黒部峡谷において例年以上の多雪であった2021年度冬季の洞窟利用について、気象要素との関係を中心に報告する。洞窟のある斜面に設置した温度ロガーによると、気温は2021年の11/22~11/24にかけて急激に低下し(11/24正午に0.3℃)、氷点下は11/29の0時に初めて記録された。11/29から翌年3/10にかけて、概略半数の観測値は氷点下を示した。カメラ記録によると、初雪(みぞれ)は11/27の夕刻(0.3~0.6℃)に、最初の積雪は12/17に確認できた。ホッタ洞の洞口に向けた洞外設置のカメラは、2022年の1/15から3月上旬にかけて多量の積雪に埋もれ、カメラ固定の金具枠は雪の重みで変形した。ニホンザルの洞窟利用は、ホッタ洞(2022年の5/25まで稼働)では11/27、12/27、12/28に記録できた。サル穴(洞内から洞口に向けたカメラで2022年の2/20まで稼働)では11/27、11/28、12/19、12/27、12/28、1/17、1/18、1/19、1/20、1/21、1/22、2/14に記録された。洞窟利用時の気温は1~-8.9℃で、昨冬季最初の利用が確認できた11/27と11/28は0.4~1.0℃であった。それ以降、洞窟利用時の気温は0.1℃以下を示し、その最低気温は11/27の0.4℃から12/28の-3.4℃、1/22の-8.9℃と低下傾向を示した。11月末の晩秋から初冬、そして厳冬期へと向かう12月から1月中下旬にかけて、寒さへの耐性を獲得していくなかで、利用時の最低気温が低下したと考えられる。また2022年6/11のデータ回収時、両洞窟の洞床には数百個にわたる糞塊がみられた。発表では、洞窟利用に際しての行動についても紹介する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012191593615616
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_42
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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