自動車との側面衝突事故におけるハンドル型電動車いす乗員の頭部傷害に関する検討

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タイトル別名
  • Study of head-injury of handlebar type electric wheelchair occupant in side collision accident with automobile
  • ジドウシャ ト ノ ソクメン ショウトツ ジコ ニ オケル ハンドルガタ デンドウ クルマイス ジョウイン ノ トウブ ショウガイ ニ カンスル ケントウ

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抄録

国内では高齢者の移動手段として、ハンドル形電動車いす(以下、電動車いす)の普及が進んでいる。今後は高齢化の進行に伴う需要増加により、電動車いすが絡む交通事故も増加することが危惧される。電動車いすの絡む交通事故では、道路横断中の事故がもっとも高い割合を占める。先行研究では、自動車が電動車いすに30km/hで側面衝突する事故を再現した実車実験を行い、乗員の頭部が路面と衝突することで頭部傷害を受傷する可能性が認められた。しかし衝突速度が変化した際の頭部傷害受傷メカニズムについては十分な検討がされていない。また自動車に標準装備のベルトや、バイクにおいて着用が義務付けられているヘルメット等の乗員保護装置の効果に関する検討も十分にされていない。本研究はComputer Aided Engineeringにより、自動車との側面衝突事故において衝突速度が変化した際の電動車いす乗員の頭部傷害受傷メカニズムの把握と、乗員保護装置の評価を目的とした。実車実験の条件から衝突速度だけを変化させた場合、衝突速度が20〜40km/hの条件で乗員は衝突車両側へ倒れ込んだ後に電動車いすから放出され、頭部や上体が路面に衝突した。頭部傷害値であるHIC36(Head Injury Criterion)は乗員の転倒挙動および頭部衝突対象が異なるためばらつき、一部の条件で傷害基準値を超えた。次に各種の乗員保護装置を検討した。乗員がラップベルトを装着した場合、乗員は一様に頭部から路面に落下し、HIC36は衝突速度15〜40km/hで傷害基準値を超えた。電動車いすのアームレストを上げた場合、側面衝突事故の発生割合が高い衝突速度30km/hまでの範囲では、乗員は一様に衝突車両側へ転倒し、乗員の移動距離が抑制された。また、乗員がヘルメットを装着すると頭部への衝撃が緩和されるため、HIC36は衝突速度10〜40km/hの範囲で傷害基準値を下回った。以上より、ラップベルトを装着せずにヘルメットの着用およびアームレストを上げることが側面衝突時の電動車いす乗員の頭部傷害低減に有効であるとの結論が得られた。

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