動物と人間 : 文明批判の視点から(その一)思想史的考察

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Tier und Mensch Unter einem Gesichtspunkt der Zivilizationskritik : Teil 1. Geistesgeschichtliche Betrachtungen
  • ドウブツ ト ニンゲン ブンメイ ヒハン ノ シテン カラ ソノ1 シソウシテキ コウサツ
  • 動物と人間--文明批判の視点から(その1)思想史的考察
  • ドウブツ ト ニンゲン ブンメイ ヒハン ノ シテン カラ ソノ 1 シソウシ

この論文をさがす

抄録

科学技術の発達によって生み出されたクローン動物が、最近特に人々の注目を集めている。人間と動物の関係、ひいては人間中心の自然支配文明が問い直されねばならない時に来ている。マックス・シェーラーは『宇宙における人間の地位』において、植物を最下位に、次に動物を、そして人間を最高位に置き、人間は動物と違って、環境世界を脱却し、それを越えて神を求める存在である、と特徴づけている。では、彼が抜け切れなかったキリスト教では動物はどのような地位に置かれているのだろうか。隣人愛、敵への愛、アガペーなど、人間への深い愛を説いてはいるが、一部の聖老を例外として、聖書を見ても、教会の姿勢を見ても、キリスト教では固有の意味での動物への愛は完全に無視されていた。動物への残虐行為は人間同士の残虐行為に転移するから禁ずる、という人間中心主義がその根底にある。動物そのものに固有の意義を認め、そのものとして動物を愛する動物愛護の理念は、キリスト教的倫理思想の延長線上ではなく、実はモンテーニュ、ルソーらの啓蒙主義とベンサムの主唱した功利主義の思想から生れてきたのである。ベンサムは、動物も人間と同じように苦しむ能力がある、という特徴を指摘し、そこから動物の権利、尊重され、保護され、守られる権利を導き出している。現代の著名な動物解放論者、ピーター・シンガーらの思想と運動は、その延長線上に展開されて行くことになる。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 19 71-88, 1998

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ