タカネソモソモ(イネ科)の学名とタイプ選定

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書誌事項

タイトル別名
  • Nomenclature and Typification of <i>Festuca takedana</i> (<i>Poaceae</i>)

抄録

<p>タカネソモソモ(イネ科)は,北アルプスの立山と白馬鑓ヶ岳で採集された標本をもとに,Poa? nuda Hack. ex Takeda として記載された (Takeda 1910).その後,Ohwi (1932) は新属タカネソモソモ属 Leiopoa を提唱し,タカネソモソモの学名を Leiopoa nuda としたが,同時にFestuca takedana の学名も提唱している.F. takedanaPoa nuda の置換名と考えられるが,その理由は書かれていない.長田 (1984) は,その理由として,「Poa nuda Hack.をFestuca に転属する時は当然 Festuca nuda となるはずであるが,すでに裸名(記載を伴わない名)でF. nuda Schur (1852) という名がハンガリーで発表されていて,種小名 nuda は使えなかったからである.」としている.</p><p> Festuca nuda Schur の名は, 1852年刊の‘Verhandlungen und Mittheilungen des Siebenbürgischen vereins für Naturwissenschaften zu Hermannstadt’ 3巻6号に出てくるが,記載を伴っておらず,裸名である.したがって,タカネソモソモをウシノケグサ属として取り扱う場合,置換名を用意する必要はなく,学名としては Festuca nuda (Hack. ex Takeda) Koba, H. Ikeda & Yonek. を用いるべきと考える.</p><p> Takeda (1910) は,タカネソモソモを記載する際に,2点の標本を引用している.1点は立山産 “in monte Tateyama (R. Yatabe et J. Matsumura ! 24. VII 1884)”,もう1点は白馬鑓ヶ岳産 “in locis saxosis regionis altissimae montis Yarigatake, prov. Shinano (H. Takeda ! 18 VIII 1905)” である.タイプの指定がないことから,この2点はシンタイプと考えられる.それぞれの標本が収蔵されている標本庫の記述はないが,Yatabe & Matsumura の標本は東京大学 (TI),アメリカ・スミソニアン国立自然史博物館 (US) およびオーストリア・ウィーン自然史博物館 (W) に,Takeda の標本は国立科学博物館 (TNS) に収蔵されていることが判明した.TI,US および W に収蔵されているYatabe & Matsumura の標本がいずれも地上部あるいは花穂の一部だけの不完全な標本であるのに対し,TNS に収蔵されているTakeda の標本は花穂および地下部を含む複数個体の完全な標本であった.Takeda (1910) の原記載は主にTNSの標本をもとになされたと考えられることから,TNS に収蔵されているTakeda の標本 (TNS01005687) をレクトタイプに指定した.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 93 (5), 322-325, 2018-10-20

    植物研究雑誌編集委員会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012346468198912
  • DOI
    10.51033/jjapbot.93_5_10884
  • ISSN
    24366730
    00222062
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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