蛍光標識ペプチドアレイを用いたプロテアーゼ切断検出と機械学習を用いた切断部位予測

  • 水谷 嶺太
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 森 陽子
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 小川 翔大
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 田添 佳歩
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 秋山 裕和
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 清水 一憲
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
  • 本多 裕之
    名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Detection of protease digestion site using fluorescence labeled peptide array and construction of machine-learning prediction model
  • ケイコウ ヒョウシキ ペプチドアレイ オ モチイタ プロテアーゼ セツダン ケンシュツ ト キカイ ガクシュウ オ モチイタ セツダン ブイ ヨソク

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抄録

<p>プロテアーゼの切断点推定方法を確立するため,4残基1990種のペプチド配列をデザインし,末端蛍光ラベルしたライブラリーを合成し,酵素分解を行い,そのデータを使ってRandom Forest(RF)で切断点推定モデルを構築した.1990配列は切断点になるジペプチドをすべて網羅している.RFモデルに利用する変数としてアミノ酸やジペプチドの存在だけでなく,ペプチドの特性を示すため位置変数(Positioning parameter, PP),および包括変数(Global parameter, GP)も考案した全532変数を用いた.プロテアーゼとして,生化学用試薬グレードのトリプシンを使用し,pH 8で切断し切断率をヒストグラムで評価した結果,予想通りアルギニン残基(R),リジン残基(K)を含むペプチド配列は切断しやすいことがわかった.構築したpH 8-RFモデルの推定精度は77 %にとどまった.RFモデルで重要度の高い10変数として,Kの存在と9個のGPが選ばれ,GPの中で,R,Kが特徴的に大きい値をとる等電点に関する4変数と極性に関する変数1個が含まれた.α-lactalbuminの切断点を予測し,実際に酵素分解し切断ペプチドをLC-MS/MSで解析したところ,42種類のペプチドが同定された.RFモデルで予測した19か所のうち14か所が一致した.69Y-70G間や50F-51H間で切断されたペプチド断片が多く,いずれもトリプシンではなく混入するキモトリプシンによる切断が強く示唆された.この部位についても構築したモデルで切断が予測できた.さらに,pH 5でペプチド切断を行い,トリプシンの加水分解に及ぼすpHの影響を調べた.pH 5のモデルの推定精度は残念ながら59 %と低かった.構築したpH 5-RFモデルでは重要度の高い10変数としてpH 8モデルと同じ等電点に関する4個のGPが含まれた.シグナル配列以降は,pH 8での結果とほぼ同数の20か所となった.同様にpH 5でα-lactalbuminをトリプシンにより加水分解し64種の断片を同定した.検出断片が多かった48Tから77Kまでの間で推定予測部位と比較したところ,新規に増加した多くの部位で構築したモデルでも切断が予測できることに加え,pHを変えることで生じる切断特異性の変化をある程度捉えることができた.今回の成果は,1990種のペプチドライブラリーと532変数で構築したRFモデルが,プロテアーゼ切断点推定に効果的であることを明らかにした.</p>

収録刊行物

  • 生物工学会誌

    生物工学会誌 100 (10), 528-540, 2022-10-25

    公益社団法人 日本生物工学会

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