閉塞性睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置装着時の感覚と精神的ストレス:モノブロック型とツーピース型の比較

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  • Feeling and mental stress when wearing an oral appliance for obstructive sleep apnea syndrome: Comparison of mono-block type and two-piece type

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抄録

<p>閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療法の一つに,口腔内装置(以下OA)の使用がある.OAの治療効果については,多くの論文で一定の効果が示されているが,装置の欠点の一つとして装着時の違和感や精神的負荷が挙げられる.その原因の一つとして,上下顎を完全に固定するタイプ(固定型OA)では,開口が完全に制限されることによる拘束感が考えられている.一方,開口運動が可能なタイプの装置(分離型OA)も存在するが,分離型OAでは上下顎の装置を繋げるコネクターを頰側に取り付ける必要があり,その突出感が固定型OAより大きな違和感を生じる可能性もある.しかしながら,これまで,固定型と分離型で,実際にどの程度,装着感や装着による精神的な負荷に違いがあるのかについての情報は少ない.本研究の目的は,固定型OAと分離型OAそれぞれの装置に対する装着感,さらにそれらの装置装着による精神的ストレスの差異を明らかにすることである.<br>被験者はボランティアの健常者12名であり,各被験者に固定型と分離型の両方のOAを製作した.歯列模型上で上下顎にそれぞれ厚さ1.5mmの熱可塑性シートを用いて全歯列を被覆するフレームを製作した.顎位は習慣性開口路上で約5mm咬合挙上した位置とした.固定型では上下のフレーム間を常温重合レジンで固定した.分離型では,垂直的な顎位を維持するために,上下顎のフレームの臼歯部咬合面に咬合平面と平行にレジンを盛り,閉口時に均等に接触させるようにした.上下顎フレーム連結にはNKコネクターⅡを用いた.<br>測定はOA非装着時,固定型OA装着時,分離型OA装着時の順にそれぞれ1晩ずつ,計3晩,被験者自宅にて,被験者本人が装置の装着や操作を行った.各日の測定項目は,唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔,心理テスト(状態−特性不安尺度,STAI),睡眠の程度の自己評価スコアとした.2クール目は間に2週間空け,装置非装着時,分離型装置装着時,固定型装置装着時の順で同様の内容を行った.2クールすべて終了した時点で,それぞれのOAの使い易さの自覚スコアを記録した.<br>唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔,STAIでは結果の測定数値に個人差や施行クール間でばらつきがみられたものの,標準値から外れる程の変化はみられなかった.また,唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔,STAIでは,固定型,分離型間に有意な差は認められなかった.睡眠の程度の自己評価スコアでは,分離型OAに比較して固定型OAのほうが有意に低値であり,熟睡感の自己評価は固定型OAのほうが低い傾向が示された.使い易さの自覚スコアについても,分離型OAに比較して固定型OAのほうが有意に低値であり,固定型OAのほうが使いづらい傾向が示された.<br>本研究の結果からは,睡眠中のストレスを客観的に反映すると思われる項目(唾液αアミラーゼ活性,心電図R-R間隔)では,固定型,分離型間の差異は示されなかった.一方,主観的な要素の強い項目(睡眠の自覚,使い易さ)では,固定型に比較して分離型のほうが優位であることが示された.本論文ではOSAS患者のOA装着によるストレス反応を完全に再現している訳ではなく,OA装着が,OSAS患者にストレスを引き起こすものではないとの結論まではつけられない.しかし,固定型と分離型の間での比較に関しては,明らかにストレス反応の差異を生じる程の違いを生じるものではない可能性は示唆された.<br>今回差異の傾向が示された睡眠の程度の自己評価スコアと使い易さの自覚はいずれも,被験者の主観的な評価項目である.そのため,装着感の観点からどちらの形態のOAが優位かを考えるうえで,覚醒時における感覚は重要な要素であると考えられた.装置製作時に前もって覚醒時の患者の好みが判断できるようなシステムが存在すれば,就寝中のOAの装着感に関するトラブルも減少させることができる可能性が考えられた.<br><br>※内容の詳細は英論文になります.</p>

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