回復期脳卒中患者の活動量向上を目的とした集団活動への取り組み

  • 清永 彩夏
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 久保田 勝徳
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉田 大地
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉村 雅史
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 玉利 誠
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 令和健康科学大学 リハビリテーション学部

説明

<p>【はじめに】</p><p>一般に,身体活動は生活習慣病の罹患リスクや総死亡率,骨格筋量などと関係することが知られている. また,脳卒中患者は病前に比べて身体活動量が低下することから,入院中の身体活動量の確保が重要であると考えられている.そのため,当院では朝・昼・夕に集団活動への自主参加を促すことにより,リハビリテーション以外の時間における身体活動量の確保に取り組んでいるが,集団活動への参加に意欲的でない例も散見される.そこで今回,集団活動への参加回数をシールで可視化することによって参加を外発的に動機づける取り組みを行ったため,その効果を身体活動量の観点から検討した.</p><p>【方法】</p><p>対象は,2021 年9 月から2022 年2 月までの期間に在院した脳卒中患者のうち,独歩もしくは杖を用いて歩行が自立しており,集団活動への参加および調査への同意が得られた患者11 名(平均年齢68.9. ± 12.4 歳)とした.集団活動は朝・昼・夕の1 日3 回各20 分とし,朝はラジオ体操,昼は起立−着座,夕は歩行とした.また,集団活動終了時に,病棟の廊下に掲示された模造紙に患者自身が参加シールを貼付することとした.さらに,OMRON 社製の3 軸加速度付き活動量計を用い,対象者の身体活動量(METs)を10 秒毎に10 時間(8 時~18 時)計測した.その後,計測したMETs を1 ~1.5METs(座位活動:SB),1.6 ~2.9METs(軽強度活動:LIPA),3METs 以上(中高強度活動:MVPA)に分類し,リハビリテーション中とそれ以外の時間の活動量を算出した.加えて,身体機能評価としてBrunnstrom recovery stage(BRS),10m最大歩行速度,6分間歩行距離(6MD),Berg Balance Scale(BBS)を調査した.統計学的処理にはSPSS ver.14 を用い,リハビリテーション中以外の時間の活動量と身体機能評価との関連性について,Pearson の積率相関係数およびSpearman の順位相関係数を算出した(α=0.05).</p><p>【結果】</p><p>リハビリテーション中の身体活動時間は,SB:74.4 ± 19.4 分,LIPA:59.0 ± 14.4 分,MVPA:21.7 ± 15.0 分,それ以外の時間は,SB:190.0± 53.9 分,LIPA:111.8 ± 42.0 分,MVPA:25.7 ± 17.1 分であり,それぞれの割合(SB,LIPA,MVPA)は,リハビリテーション中は(48%,38%,14%),それ以外の時間は(58%,34%,8%)であった.リハビリテーション以外の時間のSB は6MD(r=-0.715)とBBS(r=-0.721)との間に有意な関係が認められた.</p><p>【考察】</p><p>行動変容の理論の一つに,人の行動・認知・社会的環境は相互に影響しあうという社会的認知論がある.今回の取り組みを社会的認知論から検討すると,自ら集団活動に参加し,シールを貼付するという行動,また,シールによって自身の参加状況を把握するという認知に加え,他の患者との同調効果やスタッフからの励ましなどが相互に作用し,自主練習への参加が促された可能性が考えられる.また,当院ではリハビリテーション中に起立や歩行,エルゴメーターといった高負荷な運動を積極的に実施しているが,リハビリテーション以外の時間においても,活動量の強度別比率が地域在住高齢者を対象とした先行研究の結果(SB:56%,LIPA:40%,MVPA:5%)と近似していたことから,集団活動への参加によって,活動量の確保に加え,その強度別比率も良好に保持される可能性が示唆された.最後に,本研究ではリハビリテーション以外の時間のSB が6MD およびBBS と関係したことから,歩行が自立している患者であっても,耐久性やバランスに不安を抱える場合にはリハビリテーション以外の時間の活動量が低下する可能性が考えられるため,歩行のみならず,その耐久性やバランス能力の改善に努めることが重要であると思われた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には本研究の内容を説明し同意を得た.また,当院の倫理委員会の承認を得た(2019090903).</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012777804140928
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_108
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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