高齢運動器疾患患者に対するNMES を併用した筋力増強運動効果に影響を及ぼす関連因子の検討

  • 寒竹 啓太
    産業医科大学病院 リハビリテーション部
  • 松﨑 英章
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 中島 拓哉
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 矢羽多 雄也
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーションセンター
  • 髙橋 真紀
    医療法人相生会 福岡みらい病院 リハビリテーション科

説明

<p>【はじめに】</p><p>高齢者の筋力増強運動では、神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)が併用されることで、その効果が高まることが報告されている。一方、高齢者の筋力増強運動を行う際、運動強度や介入期間などの様々な要因が、その効果に影響することが明らかにされているが、NMES を併用した筋力増強運動の場合の筋力増強効果に関連する因子は明らかではない。本研究の目的は、高齢運動器疾患患者に対してNMES を併用した筋力増強運動を実施した場合の筋力増強効果に影響を及ぼす関連因子について検討することである。</p><p>【方法】</p><p>対象は回復期リハビリテーション病棟に運動器疾患で入院した、65 歳以上90 歳未満の全ての患者856 名とした。そのうち、医師がNMES を併用した筋力増強運動を必要と判断し、NMES の禁忌事項に該当しない75 名を解析対象とした。筋力増強運動の運動強度は低強度(1 repetition maximum[以下1RM]の30%)もしくは高強度(1RM の70%)の重錘負荷とし、医師と協議の上で患者毎に運動強度を選択した。NMES の設定は先行研究を参考とし、刺激部位は内側広筋と大腿直筋のモーターポイント上、周波数は80Hz、パルス幅は300 μs、on/off 時間は5 秒/10 秒、刺激強度は視覚的に筋収縮が確認でき、患者の耐えうる最大強度とした。NMES のon 時間と同時に重錘を用いた膝伸展運動を行い、1 日に左右各30 回、それを1週間に5 日の頻度で実施した。統計解析は説明変数を性、年齢、介入日数、運動強度、介入開始時の等尺性最大膝伸展筋力(体重比)とし、等尺性最大膝伸展筋力の介入前後における変化量を目的変数とした重回帰分析を行った。統計解析はR 4.2.0 を使用し、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>解析対象は75 名(男性17 名、女性58 名)、年齢は平均76.7 ± 6.5 歳、介入日数は中央値29 日(四分位範囲12-74 日)、運動強度は低強度42 名、高強度33 名、介入開始時における等尺性最大膝伸展筋力は平均2.64 ± 0.82N/kg、等尺性最大膝伸展筋力の変化量は中央値0.66N/kg(四分位範囲−0.43-6.36N/kg)であった。等尺性最大膝伸展筋力の変化量を目的変数とした重回帰分析の結果、他のいずれの因子とも独立して介入日数(偏回帰係数:0.015、95% 信頼区間:0.001-0.029、p <0.05)が有意な関連因子として抽出された。</p><p>【考察】</p><p>本研究では高齢運動器疾患患者のNMES を併用した筋力増強効果において、介入日数が有意な関連因子として示された。高齢の運動器疾患患者に対する筋力増強運動にNMES を併用した場合は、運動強度に関わらず十分な介入期間を設けることで筋力増強効果が得られることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>書面を用いて全ての対象者に研究目的や研究内容に関して十分な説明を行い、同意を得た。本研究は福岡みらい病院倫理委員会(承認番号201811-5)の承認を得て実施した。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012777804222976
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_42
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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