趣味活動を利用することで日中の活動量が増加した症例

DOI
  • 宮原 賢司
    医療法人福岡桜十字花畑病院 リハビリテーション科
  • 田代 耕一
    医療法人福岡桜十字花畑病院 リハビリテーション科
  • 古川 慶彦
    医療法人福岡桜十字花畑病院 リハビリテーション科
  • 堀内 厚希
    医療法人福岡桜十字花畑病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>安静臥床が全身に及ぼす悪影響と離床の重要性は、周知されている。しかし、臨床現場において離床意欲が低下した症例に対し、限られたリハビリテーション介入時間以外での日中の生活活動量を確保することに難渋する。今回、介入時間以外は臥床傾向にあった認知症を有する患者に対し、もともとの趣味を活用し、余暇時間を過ごすことができるよう離床を試みた。結果、患者の日中の活動量が増加したため報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>対象は、アルツハイマー型認知症を有しながら介護保険を利用し在宅で生活していた90 歳代の女性とした。自宅で転倒し、第3 胸椎圧迫骨折を受傷され、入院時HDS-R は15/30 であり、近監視での独歩歩行が可能であった。自ら他者とコミュニケーションを取ることはなく、日中のリハビリテーション以外は離床意欲低く、離床の促しに対して拒否的であり臥床傾向であった。認知症の増悪以前は俳句を趣味としていたが、10 数年来行っていないと家族から情報があった。</p><p>【介入・方法】</p><p>離床後の活動として、談話室に俳句季語集とノートを準備し、病棟スタッフにも対象者への離床促しを依頼し、俳句創作についても情報を共有した。身体活動量の計測には活動量計(オムロン社製Active Style Pro HJA-750C)を使用した。活動量計は、下衣上端に装着し、装着時間は入浴時間を除く朝食後の8:30 から夕食前の17:30 とした。趣味を利用した介入を行う前後でそれぞれ3 日間を計測した。計測時間内での歩行と生活活動エネルギー(kcal)、歩数、そして歩行時間を測定した。また、臥床・静的座位時間と座位活動以上の時間を比較する目的で3 日間の2METs 以上の活動時間を算出し離床活動の変化を検討した。</p><p>【結果】</p><p>3 日間の総歩行エネルギーは介入前56kcal、介入後107kcal、生活活動エネルギーは介入前234kcal、介入後393kcal であった。総歩数は介入前1398 歩、介入後2954 歩、総歩行時間は介入前67 分から介入後133 分と増加した。2METs 以上の活動時間に関しては、141 分から225 分と増加した。介入初日は俳句創作に否定的であり、セラピストが季語を伝えるといった援助がなければ創作は困難であった。介入2日目には、自ら俳句季語集から季語を選び自ら俳句を創作する行動があり、介入3 日目には作成した句を自ら添削していた。また、声掛けをしなくとも自室から歩行し離床することが見られ、最終的には季語や題材設定などの声かけをせずとも、促すことなく5 句ほど独力で詠むことが可能となった。</p><p>【考察】</p><p>日中の身体活動量が増加したことは、ただ単に離床するだけでなく、離床後の活動として趣味活動を行う目的ができ、日中の座位活動時間が延長したことが要因と考える。加えて日中の歩数・歩行時間が増加したことは、趣味活動を行うために自ら離床し、歩行する機会が増えたことが要因と考える。余暇活動への参加は、認知症のリスク低下と関連していることは報告されている。そのため認知症予防の観点からも、単に離床を促すだけでなく、患者の入院前の生活背景や趣味を聴取し、目的を持った活動を促していくことが重要で入院中の身体活動量を確保することに繋がると考える。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき本研究の目的及び方法を説明し、発表の了承を得た。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012777804260480
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_64
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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