エルゴメーターを用いた下肢の他動運動が重度脳卒中患者の下肢筋活動に及ぼす影響

DOI
  • 入江 美帆
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 冨田 誠
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉村 雅史
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 金子 翔太
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 吉田 大地
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 久保田 勝徳
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 玉利 誠
    桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員 令和健康科学大学 リハビリテーション学部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>脳卒中ガイドライン2021 では、脳卒中後の運動障害に対して課題特異的な訓練量を増やすことが勧められている。また、脳卒中患者の歩行機能の改善には、有酸素運動と筋力増強を組み合わせた訓練が有効であることも示されている。そのため、当院でも脳卒中患者に対してエルゴメータ―を用いた訓練を積極的に実施しているが、随意運動が困難な患者の場合、下肢訓練量を確保するのは容易ではない。近年では電気刺激を用いて他動的に筋収縮を促通する試みも行われているが、感覚障害や意識障害を有する患者には適用できない問題もある。そこで今回、運動障害・感覚障害・意識障害を有する重度脳卒中患者を対象に、座位型のエルゴメーターを用いた他動的ペダリングを実施し、下肢筋に生じる筋活動について検討した。</p><p>【対象と方法】</p><p>対象は、意識障害を伴う重度脳卒中患者1 名(診断名:右大脳半球脳梗塞、女性、80 歳代、JCS:Ⅲ−200、左下肢BRS:Ⅰ)と健常者1 名(男性、20 歳代)とした。対象者を椅子座位とし、対象者の足を膝関節最大伸展角度が屈曲30°となるポジションで簡易型エルゴメーター(ALINCO 株式会社製)に固定し、メトロノームのリズム(60BPM)に合わせ、下肢のペダリング運動を30 秒間実施した。患者のペダリングはセラピストが他動的に行い、健常者は自身で行った。同時に、TS-MYO(トランクソリューション株式会社製)を用いてペダリング中の麻痺側大腿直筋(以下RF)と麻痺側ハムストリングス(以下HA)の筋活動を計測し、40 ~500Hz をカットオフ周波数としてバンドパスフィルタリングした後、整流化を行った。その後、開始5 秒から20 秒間の出力値を抽出し、その平均値と最大値、積分値を算出した。</p><p>【結果】</p><p>RF の筋活動は、患者:51.07 ± 3.50 μV(最大値70.92 μV、積分値1532.17 μV)、健常者:51.27 ± 6.23 μV(最大値119.10 μV、積分値1537.58 μV )であった。HA の筋活動は、患者:12.15 ± 8.95 μV 、最大値100.36 μV、積分値363.46 μV)、健常者:12.33 ± 4.85 μV(最大値73.60 μV、積分値369.90 μV)であった。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果、他動的なペダリングを行った患者のRF とHA においても筋活動が認められた。健常者や脊髄損傷患者を対象とした先行研究により、他動的なペダリング運動でも下肢筋に筋活動が誘発されることが知られており、その背景として下行性運動路の無意識の活性化や筋の受動的伸長による脊髄反射が関与している可能性が示唆されている。また、Willoughby らは他動的なペダリング運動によってもタンパク質の分解および合成メカニズムが活性化し、長期的な実施によって筋萎縮が予防できることを示していることから、意識障害を有する患者を対象とした本研究においても、先行研究と同様のメカニズムにより筋活動が誘発された可能性が考えられるとともに、他動的なペダリング運動を継続することにより、筋萎縮を予防できる可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、当院の倫理委員会の承認を得た後、対象者の同意を得て実施した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390012777804274432
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_71
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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