頚部や体幹に呈示された骨伝導の情報伝達特性
抄録
<p> 骨伝導の一般的な呈示部位は側頭骨の乳様突起を始めとする頭部であるが,デバイスへ応用した際には装用性の悪さが問題となっていた.この問題を解決するために,骨伝導音を頭部から離れた部位に呈示する“遠位呈示方式”が提案された.我々は可聴音および数十 kHz の超音波(骨導超音波)を対象に,基礎知覚特性および伝搬特性の解明に向けた検討を行ってきた.しかしながら,遠位呈示骨伝導音の知覚メカニズムの解明に係る先行研究は極めて限定的であり,情報伝達特性には不明な点も多く残されている.本研究では,遠位呈示知覚を応用したデバイスの開発を目指して,250-4000 Hz の可聴音および 30 kHz の超音波を対象として,遠位呈示骨伝導の情報伝達特性(周波数および時間情報伝達特性,音声伝達特性,音像定位特性)の検討を行った. 遠位呈示骨伝導による時間分解能は,刺激音の周波数に関わらず気導音と同等であった.また,可聴域骨伝導音の周波数分解閾は,鎖骨において低域(250 Hz)と高域(4,000 Hz)で上昇したものの,その他の呈示部位および周波数では気導音と同等であった. 単語了解度及び単音節明瞭度試験を行ったところ,20 dB SL の刺激音を呈示した場合の乳様突起や胸鎖乳突筋における了解度は,骨導超音波で60%以上,可聴音で40% 以上であったが,鎖骨では有意に低下した. 左右に呈示した骨伝導音の弁別閾を調べたところ,呈示部位が頭部から離れるほど弁別閾が上昇する傾向が確認された.一方,可聴域では周波数が高くなるにつれて時間差の弁別閾が低下し,特に1,000 Hz では,全ての部位において気導音と遜色ない弁別閾が得られた.鎖骨では周波数の上昇に伴い,強度差の弁別閾が上昇する傾向が確認された. これらの結果は,遠位呈示骨伝導デバイスの実用性を示すと同時に,さらなる最適化に有用な知見を与えるものである.</p>
収録刊行物
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- 生体医工学
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生体医工学 Annual60 (Abstract), 215_2-215_2, 2022
公益社団法人 日本生体医工学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390012801499252736
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- ISSN
- 18814379
- 1347443X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可