噛みしめがもたらす運動パフォーマンスの影響:脊髄機能による検証

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タイトル別名
  • Effects of Clenching on Exercise Performance: Verification Using Spinal Function Assessments

抄録

<p>歯の噛みしめは運動パフォーマンスに大きな影響をもたらすが,運動パフォーマンスを発揮するための最適な噛みしめ強度は不明である.そこで,本研究の目的は,噛みしめ強度に伴った運動パフォーマンスと脊髄機能との関係を明らかにすることとした. 対象は健常成人20名とした.実験は2つ実施した.噛みしめ条件として,実験1は,咬筋最大随意収縮( MVC)の0 %, 12.5%, 25%, 50%の4条件とし,実験2は,噛みしめなし( no-bite条件),適度( moderate条件),最大努力( max条件)の3条件とした.実験1では各噛みしめ条件中に脊髄機能の計測と足関節背屈課題,実験2では足関節背屈課題を実施した.脊髄機能では脊髄相反性抑制( RI)と脊髄前角細胞の興奮性を計測した. RIの計測は,条件(総腓骨神経)-試験刺激(脛骨神経)間隔( CTI)が2 ms(Ia相反抑制),20 ms(D1抑制)の2条件に試験刺激のみ条件( single)を合わせた3条件とした.脊髄前角細胞の興奮性の計測は,一定の刺激強度でヒラメ筋 H反射振幅で計測した.足関節背屈課題は,各噛みしめ条件中に足関節背屈MVCを3秒間実施した.解析項目は,反応時間,足関節背屈ピークトルク, Sol/TA EMG ratioとした. 実験1の結果より, RIは,噛みしめ強度(25%MVC条件以上)の増加伴い有意に減弱または消失した.脊髄前角細胞の興奮性は,噛みしめ強度の増加に伴い有意に増大した.ピークトルクは50 %MVC条件で0 %MVCと比較して有意に高値を示した.実験2の結果より,ピークトルクは moderate条件, max条件で no-bite条件と比較して有意に高値を示し,Sol/TA EMG ratioはmax条件でmoderate条件と比較して有意に増加した. 本研究は,高強度の噛みしめでは(50 %MVC以上),拮抗筋同士を同時活性させ筋力発揮させる運動パフォーマンス(関節固定)に適した噛みしめ強度であった.一方で,低強度の噛みしめでは(50 %MVC未満),拮抗筋を抑制する機能を残存させ,筋力発揮させる運動パフォーマンス(関節運動)に適した噛みしめ強度であった.</p>

収録刊行物

  • デサントスポーツ科学

    デサントスポーツ科学 43 (0), 155-167, 2022-06-20

    公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390013010131995136
  • DOI
    10.57488/descente.43.0_155
  • ISSN
    27584429
    02855739
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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