強ひずみ加工により結晶粒径を微細化した難燃性マグネシウム合金の機械的特性

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タイトル別名
  • Mechanical properties of fine-grained flame resistant magnesium alloys processed with severe plastic deformation

説明

<p> 現在,地球温暖化や化石燃料枯渇等の対策のため自動車や高速鉄道車両などの輸送機器において車体の軽量化が求められている.現在使用されている鉄鋼材料やアルミニウム合金の代替として,実用構造用金属中最軽量のマグネシウム合金を使用することにより,車体の軽量化が期待できる1).しかし,マグネシウム合金は鉄鋼材料やアルミニウム合金に比べて,難燃性•強度•延性•成形性などの特性に不十分な点がある.従来のマグネシウム合金の発火温度が低く,輸送機器等に用いるためには発火温度を上げる必要があった.近年,Caを約1 ∼2%添加し,発火温度を200∼300℃程度上昇させた難燃性マグネシウム合金を用いることにより,難燃性の問題点を改善することに成功している2).</p><p> 一方,強度や延性の向上に関しては現在も盛んに研究が進められている.一般的にマグネシウム合金は結晶粒微細化による強化が有効であるとされている.結晶粒微細化による高強度化についてはホールペッチの式を用いて整理されることが一般的であり,アルミニウム合金に比べマグネシウム合金の方が微細化による強化が有効であることが知られている3).しかし,純マグネシウムにおいては,結晶粒が著しく微細化すると強度の結晶粒径依存性が変化し,1 µmよりも微粒側で結晶粒微細化による強度の上昇が生じにくくなることも報告されている4).以下にホールペッチの式を示す.</p><p>   σ = σ0 + K d−1/2   (1) </p><p> ここで,σ:多結晶の降伏応力,σ0:摩擦応力,d:結晶粒径,K:Hall-Petch係数,である.本研究では,2種類の難燃性マグネシウム合金を対象として,結晶粒微細化を目的としてFSP(friction stir processing:摩擦撹拌処理)を用いた.FSPとは,FSW(摩擦撹拌接合)の技術をそのまま表面改質処理に応用したものであり,高速回転するツールを被加工材へ押しつけ,摩擦熱で塑性変形抵抗を失わせ,ツールの移動により直接撹拌を行う.結晶粒径は,加工中の入熱量が低いほど微細化する5).</p><p> 本研究では,AX61(Mg-6Al-1Ca)およびAX81(Mg-8Al-1Ca)合金を用いてFSP加工を様々な条件で施し,組織と機械的特性に及ぼすFSP加工条件の影響について検討を行なった.また,研究を進める過程においてFSPによる結晶粒径の変化はあまり大きくなく,強度の変化も小さいことが判明したため,結晶粒をさらに微細化可能なHPT(high-pressure torsion)も実施して結晶粒径と強度との関係について調べた.HPTにおいては,ディスク状の試料を上下のアンビルに挟み込み,圧力をかけながら回転しひずみを導入する.処理中の温度上昇は小さいため,結晶粒径をサブミクロンレベルまで微細化させることが可能である6).難燃性マグネシウム合金にFSPやHPTを適用した例は少なく,特性改善やFSWを実際に適用する際にも加工条件に伴う組織や特性を知ることは有効であると考え,本研究を実施した.</p>

収録刊行物

  • 軽金属溶接

    軽金属溶接 60 (Supplement), 34-41, 2022-12-23

    一般社団法人 軽金属溶接協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390013043977374080
  • DOI
    10.11283/jlwa.60.34.r-5
  • ISSN
    2186618X
    03685306
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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