肝OATP1B内在性基質であるコプロポルフィリンIの体内動態解析―PBPKモデルを用いた包括的解析

DOI
  • 葛西 航貴
    横浜薬科大学大学院薬学研究科薬科学専攻臨床薬理学研究室
  • 吉門 崇
    横浜薬科大学薬学部臨床薬理学研究室
  • 千葉 康司
    横浜薬科大学薬学部臨床薬理学研究室

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抄録

<p>【目的】肝臓のorganic anion transporting polypeptide 1B(OATP1B)は多くのアニオン性薬物の取り込みを担っている。OATP1B内在性基質コプロポルフィリンI(CP-I)は薬物間相互作用(DDI)の予測に役立つバイオマーカーとして注目されている。本研究では、複数の臨床試験1)-3) におけるCP-Iの血中濃度推移データを、生理学的薬物速度論(PBPK)モデルで包括的に解析することを目的とした。</p><p>【方法】Laiらが報告した臨床試験で得られたOATP1B阻害薬リファンピシン(RIF)600 mg経口投与によるCP-I血中濃度推移の変化1) を、既報のCP-IおよびRIFのPBPKモデルとクラスターガウスニュートン法(CGNM)4) を組み合わせた手法5) により解析した。実測値を良好に再現するパラメータセットを探索し、別の臨床試験結果2) ,3) の解析で得られたパラメータセット5) と比較した。同臨床試験1) においてOATP1Bプローブ基質薬として投与されたロスバスタチン(RSV)の血中濃度推移も同時に解析し、RIFによるOATP1Bの阻害定数(Ki,u,OATP)の基質依存性を検証した。</p><p>【結果・考察】CGNM解析により、CP-IおよびRSVの血中濃度データ1) を説明可能なパラメータセットが多数得られた。既報5) において、CP-Iの生合成速度(vsyn)、肝固有クリアランス(CLint,all)およびKi,u,OATPがCGNMにより感度の高いパラメータとして同定されていたが、CGNMで得られた各パラメータの中央値を異なる試験間1)-3) で比較すると、いずれも1.2倍の範囲内で得られていた。Ki,u,OATPについて、RSVの解析で得られた中央値(93.8 nM)はCP-Iの解析で得られた中央値(53.6 nM)より1.8倍高かったが、RIFによるKi,u,OATPには基質依存性があるという報告5) と矛盾しないものであった。</p><p>【結論】異なる臨床試験由来のCP-I血中濃度データを、CGNMにより包括的に解析することができた。既報5) で提案されたCP-IのPBPKモデルには汎用性があると考えられる。今後は本モデルを動物実験データにも適用することで、種差の検討も進めていきたい。</p><p>【参考文献】1) Lai Y et al., J Pharmacol Exp Ther.,358:397-404,2016; 2) Takehara I et al., Pharm Res., 35:138, 2018; 3) Mori D et al., Clin Pharmacol Ther., 107:1004-1013,2019; 4) Aoki Y et al., Optim Eng., 1-31, 2020; 5) Yoshikado T et al., CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol., 2022, in press.</p>

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