新型コロナウイルスワクチン治験の実施での問題点と課題

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抄録

<p>【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより医療システムは逼迫し、人々の健康に大きな影響を与えた。そのため新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンの開発が急務とされた。当院で新型コロナウイルスワクチンの治験を複数実施した中で、開始時に想定してなかった様々な問題点や課題があったので報告する。【方法】2020年9月より新型コロナウイルスのワクチン試験を5試験実施し、うち4試験は実施中である。治験を実施したワクチンの内訳は、メッセンジャーリボ核酸(messenger ribonucleic acid ; mRNA)ワクチンが3試験、不活化ワクチンが1試験、アデノウィルスベクターワクチンが1試験であった。【結果・考察】試験に組み入れられた被験者数は総数484名で、うち65歳以上の高齢者は207名であった。治験の進行にとって問題となる重篤な有害事象はみられなかった。認められた有害事象は、注射部位の疼痛など注射部位の有害事象が多く発熱や筋肉痛などの全身性の有害事象も見られた。高齢者に比べ非高齢者での副反応の発現率が高い傾向にあった。治験を実施し以下のような問題点や課題を認めた。・海外又は国内における新たな安全性情報の報告に伴い治験実施中に随時安全性評価が必要になり治験が中断した治験が一部あった。予定していた日程を変更することになり一部の被験者の予定が合わなくなり参加を辞退されたため新たに被験者募集を行った。・用量漸増の試験では進捗に時間がかかり、その間に公的ワクチン接種が加速し被験者募集が困難になった。治験実施時期の公的ワクチン接種状況や感染状況により募集や組み入れスピードに影響があった。・治験実施中や未承認の用法用量の場合には渡航などに効力のある公的な接種証明書を発行出来ないので、公的ワクチンの接種を希望し中止となった症例があった。・治験終了後に公的ワクチンを接種しに行った時に、治験で開発中の新型コロナウイルスワクチンを接種されているため公的ワクチンを接種した際の安全性・有効性に与える影響が判断できないと言われ接種出来ないことがあった。【結論】治験開始時には想定していなかった課題や問題点が発生し、治験の進行が遅れたり中止した被験者が出た。今後のパンデミックワクチン開発時には今回のような問題点や課題を考慮し事前に準備しておく必要があると考えられた。</p>

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