バンコマイシン関連腎障害発症後の腎障害遷延は、生命予後を悪化させる― 2種類のリアルワールドデータを用いた融合解析 ―

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<p>【目的】バンコマイシン(VCM)関連腎障害(VAN; VCM-associated nephrotoxicity)は、投与症例の約10~40%に発症する重篤な有害事象である。近年、発症後の腎障害遷延や生命予後の悪化が問題となっているが、転帰に関連する因子は明らかになっていない。今回、VAN発症後の腎障害遷延や生命予後に関連する因子について検討した。</p><p>【方法】2つのリアルワールドデータを用いて解析した。まず、世界最大規模の副作用自発報告が集積されているFAERS (FDA Adverse Event Reporting System)を用いてVAN発症と死亡の関係を検討した(1. FAERS解析)。次に、詳細な情報を得られる診療情報データ(EMR: Electronic Medical Records)を用いて、VAN発症後の腎機能遷延および生命予後の悪化に関連する因子を検討した(2. EMR解析)。</p><p>(1.FAERS解析) 2004年第1期~2020年第1期に、注射用VCMが投与された10,414例の報告を解析した。VAN発症と死亡の関係は、ロジスティック回帰分析により検討した。</p><p>(2. EMR解析) 2006年1月~2019年3月に徳島大学病院において、VCMが初回投与された482例を解析した。VAN発症後の腎障害遷延および生命予後に対する観察期間は、それぞれ7日、1年間とした。VAN発症後の転帰に関連する因子は、Cox比例ハザード分析により検討した。</p><p>【結果・考察】FAERS解析におけるVAN発症例の死亡率 (23.3%, 613/2634)は、非発症例 (17.2%, 1338/7780)よりも有意に高かった [調整オッズ比: 1.43, 95%信頼区間(CI): 1.28-1.59]。FAERS解析にてVAN発症後の死亡率上昇が示唆されたため、VAN発症後の予後悪化に関連する因子をEMR解析にて検討した。全482例中、VAN発症は72例(14.9%)、院内死亡は74例(15.4%)に認められた。1年の観察期間における生存は234例 (48.5%)、死亡は136例 (28.2%)、打ち切りは112例 (23.2%)であった。VAN発症後の腎障害遷延は、院内死亡[ハザード比 (HR):4.05, 95%CI: 2.42-6.77]および1年死亡(HR: 3.03, 95% CI: 1.98-4.64]に有意に関連していた。腎障害の改善率は、AKIステージ≧2に進展したVAN発症例で有意に低かった (HR: 0.09; 95% CI: 0.02-0.40)。VAN発症後の生命予後悪化には腎障害の遷延が関連しており、そのリスク因子はAKIステージ≧2への進展であることが示された。</p><p>【結論】VCM投与症例の生命予後改善には、VANの発症と重症化を予防することが重要である。</p>

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