「節薬バッグ運動」を介した高血圧患者の服薬アドヒアランス不良に影響を及ぼす要因の解析

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<p>【目的】日本の高血圧患者は2017年において993万7千人であり、心疾患や脳血管疾患の最大の危険因子である。九州大学大学院薬学研究院・臨床育薬学分野では、一般社団法人福岡市薬剤師会と共同で、2012年より「節薬バッグ運動」を開始した。この運動は医療費削減、薬剤適正使用、服薬アドヒアランス向上に寄与することを目的としており、2017年から一般社団法人墨田区薬剤師会(墨田区薬)、さらに2018年から公益社団法人大分市薬剤師会(大分市薬)に拡大して展開している。今回は、2017年から2021年に収集したデータを用いて、高血圧患者の服薬アドヒアランスに及ぼす要因について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】墨田区薬、大分市薬の会員薬局において「節薬バッグ」を配布し、本運動に賛同を得た全外来患者のうち、降圧薬が処方されている患者949名を対象とし解析を行った。残薬確認は患者が持参したすべての薬剤について薬剤師が対面で行い、処方医の了承を得た上で残薬調整を行った。処方箋コピーを収集し、患者データ及び処方箋データについて集計を行った。服薬アドヒアランスの評価指標として処方削減率(PRR:Prescription Reduction Ratio)を用い、PRR>0.2を服薬アドヒアランス不良とした。またアドヒアランス不良群と良好群に分け、アドヒアランス不良を陽性としたロジスティック回帰分析を行った。解析結果としてオッズ比(OR)を算出し、予想精度は95%信頼区間(95%CI)により評価した。本研究は、九州大学医系地区部局倫理審査委員会の承認を得て行った。</p><p>【結果・考察】対象患者が服用していた1,647件の薬剤のうち、479件(29.1%)がアドヒアランス不良であった。多重ロジスティック解析の結果、服用回数として、「1日1回」と比較して「1日3回」(OR, 5.09; 95%CI, 1.51-17.13)は有意なアドヒアランス不良要因であった。また「ARBの処方」と比較して「β遮断薬の処方」(OR, 1.44; 95%CI, 1.02-2.03)は有意なアドヒアランス不良要因であり、この2項目は降圧薬のアドヒアランス不良に関わる因子であることが明らかとなった。服用回数が多いことがアドヒアランス不良の要因であることはこれまでにも報告が多くされており、用法の検討をする必要があると考えられる。</p><p>【結論】降圧薬の用法や効果・効能の違いを考慮した上での薬剤変更を検討することにより、服薬アドヒアランス向上に結びつけることが必要である。</p>

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