関節リウマチ治療における抗体医薬品のTDMとその臨床的意義

DOI
  • 米澤 淳
    京都大学大学院薬学研究科 京都大学医学部附属病院薬剤部

抄録

<p>抗体医薬品は、メトトレキサートだけでは効果が不十分な関節リウマチ患者における薬物治療に必要不可欠である。他方、高額であることから医療経済への影響が危惧され、適正使用が望まれている。抗体医薬品は生体成分のイムのグロブリンIgGとほぼ同じ構造であることから、ヒトにとっては生体類似物質であるが、動物にとっては完全な異物である。従って、動物を用いた研究からヒトにおける体内動態変動を予測することは困難であり、ヒトにおける臨床薬理学研究の重要性がきわめて高い。近年、抗体医薬品は免疫原性を有することから生体内で抗薬物抗体が産生され極端な血中濃度低下を来たすことが報告され、血中濃度モニタリング(TDM)の重要性が示唆されている。しかし、低分子医薬品のように血中濃度に基づいた投与量調整を行うわけではなく、TDMの活用法が明確ではない。我々は、関節リウマチ患者における抗TNFα抗体インフリキシマブ血中濃度測定の意義について、京大病院リウマチセンターのKURAMAコホートを用いたリアルワールドデータ解析を実施した。長期使用時において、インフリキシマブの血中濃度は、関節リウマチの疾患活動性を示すDAS28-ESRとの相関を示した。すなわち、血中濃度低下患者において、再燃が確認された。他方、インフリキシマブ治療開始時には、血中濃度を測定せずとも全ての患者で適切に増量され有効性が確認された。したがって、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブのTDMは、2次無効を検出するために有用であることが示唆された。抗体医薬品は開発段階において代謝分析等が実施されておらず、体内における構造変化(分解、代謝、修飾等)に関する情報は皆無である。我々は質量分析器を用いた抗体医薬品血中濃度一斉測定技術やTOF-MSを用いた生体内における抗体医薬品の構造解析法など新たな体内動態解析手法を確立してきた。患者検体の解析の結果、抗体医薬品の糖鎖割合の変化やアミノ酸切断などのバイオトランスフォーメーションを検出している。本シンポジウムでは、質量分析技術を活用した抗体医薬品の分析手法とその臨床研究への応用について紹介し、抗体医薬品の最適医療を目指したInnovationへの挑戦について議論したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390013087509606656
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.43.0_3-c-s34-2
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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