鳥類普通種に対する地域住民の保全意欲に影響する要因の解明:視覚的知識と聴覚的認識

  • 大平 まどか
    帯広畜産大学保全生態学研究室
  • 平田 瑞穂
    帯広畜産大学保全生態学研究室 建株式会社建設技術研究所
  • 赤坂 卓美
    帯広畜産大学保全生態学研究室
  • 久保 雄広
    国立研究開発法人国立環境研究所 Durrell Institute of Conservation and Ecology (DICE), School of Anthropology and Conservation, University of Kent, UK Department of Zoology, University of Oxford, UK

書誌事項

タイトル別名
  • Determinants of citizen's willingness to pay for common bird conservation: The significance of visual and acoustic recognition
  • チョウルイ フツウシュ ニ タイスル チイキ ジュウミン ノ ホゼン イヨク ニ エイキョウ スル ヨウイン ノ カイメイ : シカクテキ チシキ ト チョウカクテキ ニンシキ

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説明

<p>持続的な生態系サービスの享受には生物多様性の保全が必要である。なかでも普通種の保全は、生態系の健全性や生物多様性の維持において大きな意味をもつ。しかし、生物多様性の保全に関する議論の多くは、これまで希少種ばかりが着目されてきた。特に、人の生活する環境にも豊富に存在する普通種の保全には、地域住民による保全行動が重要であるが、地域住民における普通種への意識や保全意欲についてはその多くが未だ不明である。そこで本研究は、地域住民による生物多様性の保全行動を促進することを目的に、北海道十勝管内の地域住民を対象に、鳥類の普通種に対する保全意欲(保全への支払意志額)と普通種に対する知識(種判別に関する知識)、認識(生活の中で認知)、および関心の関係を、鳥類に関するアンケート調査により明らかにした。この際、普通種の構成は地域によって異なることを考慮し、十勝管内において鳥類の定点観察を実施し、その結果から本調査地域の普通種を特定した。また、鳥類への認識や知識は、鳴き声によるもの、姿を目視することによるものに違いがある可能性を考慮し、十勝管内の多くの場所でさえずりが確認できる種を聴覚的普通種、姿を確認できる種を視覚的普通種として定義した。結果、普通種に対する保全意欲は、聴覚的普通種と視覚的普通種では異なる因子が関係しており、聴覚的普通種への保全意欲は聴覚的普通種に対する認識が、視覚的普通種への保全意欲は視覚的普通種に対する知識の程度が関係していることが明らかになった。また、本研究において種同定能力は両タイプの普通種で低かったが、平均支払意志額は 500円を超えていた。さらに種を同定できた被験者は、その知識を家庭教師や家族などの他者から得ていた。そのことを考慮すると、今後、地域での普通種の保全を推し進めるためには、環境教育をはじめとした効果的な情報提供、また外来種等の実情に関する情報共有などが求められるだろう。</p>

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 27 (2), n/a-, 2022-10-20

    一般社団法人 日本生態学会

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