説明
記憶回路の構成要素に局在性病変を生じた症例の報告は散見されるが,それらの合併症例の報告は少ない.今回,脳弓と前脳基底部損傷により健忘症状が重症化・遷延化した症例を報告する.本症例の知的機能は良好であったが,発症から10ヶ月時点においても重度の健忘症状が残存しており,外来や訪問看護内でのリハビリテーション介入を実施した後も健忘症状に大きな変化を認めなかった.近年,海馬と嗅周皮質を軸にした2つの記憶回路が提唱されており,一方が障害された場合には記憶障害が軽度にとどまるが,同時に損傷した場合には重度の健忘を生じると考えられている.本症例はこれら2つの回路に同時に損傷をきたしたことが健忘症状の重症化・遷延化の一因である可能性が考えられた.また,両回路の損傷を認める場合,健忘症状の重症化・遷延化を念頭に置き,環境調整や家族指導などの支援を継続的に行うことの重要性が示唆された.
収録刊行物
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- 福井医療科学雑誌
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福井医療科学雑誌 18 15-20, 2022-03-31
福井医療大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390013352874308736
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- ISSN
- 24240176
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可