量子情報の基礎と量子インターネット
-
- 東 浩司
- NTT 物性科学基礎研究所
抄録
量子力学の完成から約1世紀になる.その間量子力学は,その解釈にこそ様々な疑問が呈されてきたが,素粒子から天文学に至る広範な物理現象に対し,正確な定量的理解を提供してきた.そのため,その正当性は今や疑う余地のないものとなってきている.一方で,1948 年に Shannon によって導入された情報理論は,抽象概念である「情報」や通信限界の定量化に成功しており,現代の通信社会を支える礎となっている.前世紀の末に,これらの理論は組み合わされ,量子情報理論となり,量子力学の下で許される情報処理の潜在能力や限界について新たな知見を与えている.より具体的には,量子計算や量子通信に象徴される,現代の計算や通信の枠を超える全く新しい情報処理の可能性が明らかになってきた.本講義では,量子力学を数学的枠組みとして捉えることから始め,量子力学特有の相関である「量子もつれ」が量子情報処理のリソースであることを示す.また現実的にそのリソースを供給する方法について解説し,これらの方法の実現が,なぜ将来の量子通信ネットワーク「量子インターネット」実現の礎となるのかについても解説する.
収録刊行物
-
- 物性若手夏の学校テキスト
-
物性若手夏の学校テキスト 1 (0), 152-175, 2023
物性若手夏の学校準備局
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390013552702602624
-
- ISSN
- 27582159
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可