高齢者タウオパチーの臨床,画像,病理

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  • 橋詰 良夫
    医療法人さわらび会福祉村病院神経病理研究所

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抄録

本論文では筆者が当院で病理解剖を担当し,神経病理診断を行った高齢者タウオパチーの臨 床,画像,病理所見のまとめを記載した.神経原線維変化型老年期認知症と診断できた症例の頻度は 4.2% で,男女別では87% が女性で圧倒的に女性に多く,死亡時の年齢は80 歳から101 歳で,平均 91 歳で後期高齢者の疾患である.認知症発症から死亡までの期間は平均8.3 年である.臨床的には, ほぼ全例で妄想,幻覚,暴行,介護拒否,夜間不穏,不潔行為などの症状が出現し,看護・介護に手 こずる症例が多いことが特徴で,画像では海馬,海馬傍回,扁桃核などの辺縁系の萎縮の程度は比較 的軽度である.肉眼的には辺縁系に萎縮は限局しており,他の新皮質の萎縮はない.組織学的には辺 縁系に限局して神経原線維変化が多数出現し,ゴースト化したものが目立つ.Braak stage II~III の ものが多い.海馬傍回の皮質の萎縮と神経細胞脱落とグリオーシスを認める.老人斑はないか,出現 してもごく軽度である.嗜銀顆粒性認知症(純粋型)の頻度は3.6% である.死亡時年齢は75 歳か ら97 歳で,平均89 歳で後期高齢者の疾患である.全経過は平均7 年である.初発症状は物忘れが多 いが,初期から徘徊,大声,妄想などのBPSD を示すこともあり,経過が進むと妄想,不穏,暴力, 介護拒否を示すことが多い.画像では迂回回,扁桃核を含む側頭葉前方の萎縮がめだち,症例の半数 近くでは左右差が認められる.肉眼的な萎縮は迂回回,海馬傍回で認められ,前方海馬に強調され, 後部海馬は保たれる傾向にあり,他の部位の萎縮は目だたない.嗜銀顆粒は灰白質のニューロピル(迂 回回,海馬支脚,嗅内野,扁桃核,側頭葉皮質)に出現しやすく,Gallyas-Braak 染色が有効で抗リ ン酸化Tau 抗体で陽性に染色される.

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