“彼の声”と2人の天使:正義批判論としての『009 RE: CYBORG』

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タイトル別名
  • His Voice and Two Angels: <i>009 RE: CYBORG</i> as a Critique of Justice

抄録

<p>数多くの映画がしばしば、正義という概念への懐疑と共に、正義のヒーローを描いている。『009 RE: CYBORG』(神山健治、012)はそのジャンルに属しながらも、少々奇抜な方法によって、非常に明確な映像と音響を介しながら、正義についての別の考えを示す。本稿は、「暴力批判論」(ベンヤミン)や『法の力』(デリダ)を参照することで、その映画内の奇抜さを、暴力の表象を問うているものとして、考察する。この暴力の表象はまた、隠蔽という作用と一体になることで、“正義”という概念を成り立たせる中枢的条件となっている。暴力の表象への問いは、この作品内で、次の2つの主要な映画的表現方法により展開される。1つ目は、“彼の声”についての音響的構成である。それは、聞いた者を暴力的な正義の実行へと強制する。2つ目は、天使に関する視覚的構成である。それは、主人公“ジョー”を、正義の単なる表象から逃しながら“彼の声”との新しい関係を作り出す場所へと、連れてゆく。このような分析に基づいて、この論文は次のように結論付ける。即ち、このアニメーションが描くヒーローの表象は、正義の現前を掲げながらそれを実行することに対抗する自身の力を獲得している。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390013706726703616
  • DOI
    10.34370/jjas.18.1_3
  • ISSN
    24351989
    1347300X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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