生体腎移植後に副作用のため複数の化学療法施行が難渋した再発乳癌の1例

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抄録

<p>【症例】68才女性。29才時、妊娠糖尿病を契機に糖尿病性腎症となった。44才で右乳癌で手術。60才で左乳癌に罹患。左乳癌は炎症性乳癌様T3硬癌で胸筋温存乳房切除術を施行。術後化学療法、放射線療法を施行し、letrozoleで加療していた。64才で腎機能悪化し血液透析を導入となったが、腎移植を強く希望された。前医乳腺外科医に再発なく、適応について確認後、66才時に当科で夫をドナーとした血液型不適合生体腎移植術を施行した。tacrolimus(Tac) 、MMF、少量mPSLで継続加療し、腎機能は安定していたが、1年後に左乳癌が胸壁再発しfulvestrant開始。その後exemestane+everolimus(Evero)に変更されたが、2か月で激しい口内炎とCr1.27mg/dL、尿蛋白5.0g/日とネフローゼ症候群を認め入院。Evero濃度はトラフで17.5ng/mLと上昇。移植腎生検では、著明な内皮・上皮細胞障害を呈し、Everoによる腎障害と診断。Evero中止によりネフローゼは回復。再度tamoxifenで治療したが、6ヵ月後に進行性となりpalbociclib(Palbo)投与を開始した。Palbo投与後再発巣は縮小するも、約3か月で全身浮腫・胸水貯留し永眠された。</p><p>【考察】化学療法としてのEvero投与ではEvero濃度が上昇し、ネフローゼ症候群を呈した。CDK4/6阻害薬であるPalboではCYP3A阻害作用があり、Tacとの併用が困難で、Palbo投与量決定は困難だった。移植患者の化学療法では免疫抑制薬との相互作用があり、知見も少なく、非常に考えさせられる症例であり報告する。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s396_3-s396_3, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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