家族農業における女性の経営参画要因 ―経営参画状況が異なる女性の事例分析から―

書誌事項

タイトル別名
  • Factor in Women’s Participation in Family Farm Management
  • カゾク ノウギョウ ニ オケル ジョセイ ノ ケイエイ サンカク ヨウイン : ケイエイ サンカク ジョウキョウ ガ コトナル ジョセイ ノ ジレイ ブンセキ カラ

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抄録

本稿では,近年,ライフコースの多様化を背景に経営参画における課題が複雑化している若い世代の女性農業者を対象に,経営参画状況の違いを生み出す要因について,能力形成・学習機会,農業経営の変化,家族関係,就農経緯の4点から分析した。主な分析結果は次のとおりである。 第1に,就農前の農業経験は,必ずしもその後の経営参画に直結しているわけではなかった。農業経験を有する女性であっても,結婚前後に従事する業務内容の一貫性の有無や就農経緯によって,現在の経営参画状況は異なっていた。一方で,非農業分野での経験は,特に,販路や事業の多角化を通して,経営参画に結びついていた。 就農後の能力形成・学習機会については,公的機関等での研修経験や日業的な農作業従事の蓄積が経営参画を促していた。一方で,女性農業者によるネットワークへの参加経験は,現時点では,必ずしも経営参画に直結していないものの,女性の経営参画意欲の向上や,家族内の固定的な役割分担を外側から変化させる可能性が示唆された。 第2に,農業経営の多角化は女性が参画可能な新しい役割を生み出し,それが女性農業者という新しい人材を必要とすることで,結果として,女性の経営参画を進める役割を果たしていた。他方,現状維持志向が強い経営では,女性が新たに参画する余地が少なく,既存の役割分担が固定化されやすい傾向がみられた。 第3に,生活面での世代間分離による再生産労働の負担軽減,家族の女性に対する後継者や経営者としての期待,就農に対する意思の尊重,世代交代による役割分担の変更は,女性の農作業への関与や経営参画を促進・強化していた。他方で,三世代同居による再生産労働の物理的・心理的負担,家族の女性農業者に対する遠慮や気兼ね意識,女性の世代交代の遅れは,女性の経営参画を阻害していた。 第4に,就農経緯の違いは,能力形成・学習機会,農業経営の変化,家族関係を介して,女性の経営参画に影響を与えていた。本稿では,「経営参加型」の親元就農女性,「経営参加型」の新規就農及び婚姻就農女性,「経営不参加型」の婚姻就農女性という,女性農業者のタイプによる経営参画要因の違いを明らかにした。

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