若年層のたばこ使用の防止による公衆衛生の意義

DOI Web Site オープンアクセス
  • 田野 ルミ
    国立保健医療科学院生涯健康研究部
  • 平野 公康
    国立がん研究センターがん対策研究所がん情報提供部

書誌事項

タイトル別名
  • Preventing tobacco use among young adults has significant implications for public health in the future

この論文をさがす

抄録

<p>日本では2022年 4 月に成人年齢が引き下げられたにもかかわらず,法的にたばこ製品が購入可能で喫煙できる最低年齢(MLA; Minimum age of Legal Access)は,20歳で維持された.これは,喫煙開始年齢が早いほど,がんや循環器疾患などのたばこ関連疾患のリスクが高く,早世リスクが高いこと,および喫煙開始年齢が若い人ほどたばこをやめにくくなることが理由の一つとされている.厚生労働科学研究費補助金の研究班による調査によると中高生の喫煙率は大幅に減少しているが,国民健康栄養調査などによる20代の喫煙率は依然として高い.中高生の喫煙率が劇的に低下しているのとは対照的に,その低下傾向は顕著ではない.</p><p>喫煙者は非喫煙者に比べて,偏った食事や運動不足などの生活習慣の乱れを併せ持つことが報告されている.また,若年喫煙者の周囲の家族,友人などの喫煙行動が,若年成人世代の喫煙開始に関係していると見られることを考えると,社会的要因への環境改善対策として,子どもの周囲で喫煙する機会,子どもが身近にたばこを目にする機会をなくしていくことが重要となる.</p><p>今回の民法改正で成人年齢(18歳)とMLA(20歳)が分離され,18歳で成人しても法的に喫煙できない年齢層が生じることとなった.たばこの健康への悪影響の大きさを考えたとき,喫煙は20歳のままで良いのか.現在のMLAを20歳から引き上げる必要があるのかを考える必要があるのではないか.外国では,MLAを引き上げる事例も報告されている.わが国においても,MLAの引き上げは公衆衛生政策の選択肢として考えるべきではないか.MLA引き上げを含めた包括的なたばこ予防・管理プログラムにより,喫煙者数,たばこ関連疾患および死亡の発生が減少することは明らかである.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 72 (1), 52-61, 2023-02-28

    国立保健医療科学院

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ