メタバースを中心とするバーチャルリアリティ における著作権法の「実演」に関する一考察

DOI
  • 栗原 佑介
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授 株式会社情報通信総合研究所主任研究員

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on "the Performance" of Copyright Law in Virtual Reality Centered on the Metaverse
  • Focusing on the Significance of "that Performance"
  • 「その実演」の意義を中心に

抄録

<p>本稿は、将来、通信環境がより大容量、低遅延、多接続となり、現実の動きがシームレスにバーチャルリアリティに反映される情報通信環境を想定し、アバターを介した実演の法的保護を明らかにすることを目的とする。</p><p>現在、著作権法上、実演家の権利は「その実演」を保護対象としている(同法90条の2~92条の2)。この場合、メタバース(以下「MV」という。)上での「実演」(同法2条1項2号)あるいは実演相当行為は、「その実演」に該当するのかという論点がある。また、著作権法91条1項は録音録画権を保障するが、いわゆるワンチャンス主義によって、その範囲が一般的には限定されている(91条2項)。しかし、91条2項は、「映画の著作物」において録音・録画される場合を対象とする。そのため、リアルタイムでの実演をMV上で行った場合、この要件に該当するのかという点も論点となる。</p><p>これらを検討した結果、実演家保護の制度趣旨に関し、準創作行為保護説と伝達行為保護(投資行為保護)説の対立があるところ、現代においては、伝達行為のコストが下がり、実演に個性が表出されることを保護するべきであり、準創作行為保護説が妥当であることを示した。</p><p>次に、MV上でのアバターの実演(相当行為)が、現実の実演家による実演として評価できるのか。「その実演」の意義と判断基準を検討した結果、①MV上でも「実演」といえるための基準としては、当該表現に実演家の個性が表出されているか否か、という観点から判断し、該当すれば、MV上の表現であっても、実演と評価されるべきであること、②MV上でアバターが実演を行った場合に、実演家の権利が及ぶ「その実演」といえるためには、機械的再生であること、アバターがなす実演から、もとの実演の個性の表出を感得でき、当業者(当該芸術分野の通常の知識を有する者)を基準にしてその同一性を感得できるか否か、という観点から判断すべきである2点の知見を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014104843814400
  • DOI
    10.24798/jicp.6.2_15
  • ISSN
    24329177
    24336254
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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