重度脳性麻痺選手の呼吸機能及び競技力強化における呼吸筋トレーニングの有用性

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抄録

<p>東京2020年パラリンピック競技大会(2021年開催)でのメダル獲得へ向け、選手の競技力・パフォーマンスの更なる向上が求められていた。障がい者スポーツ競技の中でもボッチャ競技を行う主な選手は重度脳性麻痺者であり、身体機能向上を図るトレーニングは機能的・医学的な側面からも非常に困難である。また遂行可能な運動も限られており、健常アスリートと同様のトレーニングプログラムを当てはめることはできない状況であった。</p><p>しかし近年のボッチャ競技においては柔らかいボールが多用されるようになり、ボールを近づけるのみならず、はじく・押す・乗せるなど、ボールを強く・速く・遠くに投げる能力が求められている。遠投には、上肢機能はもとより、そのパワーを生み出す基礎となる体幹の安定性が大きく関与する。体幹の安定性には、体幹筋強化はもとより、体幹の保持・安定性向上に大きく影響する呼吸筋のトレーニングも重要である。脳性麻痺者は一般的に呼吸機能検査上、拘束性換気障害に分類されるものが多く、肺活量においては、片麻痺者に比して減少が大きいとの報告もある。</p><p>実際に重度脳性麻痺選手を対象に呼吸機能評価を実施したところ、各項目共に非常に低値を示した。このようにボッチャ選手は体幹筋のみならず、著しい呼吸機能弱化が認められたことから、脳性麻痺選手用にアレンジした吸気筋トレーニング(inspiratory muscle training: IMT)を実施し、強化を図っている。</p><p>一方、スポーツ競技において体力・技術と並び、心理的要因がパフォーマンスに大きな影響を与えることは知られているが、報告は少なく一貫していない。呼吸はリラクセーションや情動的状態の制御など精神面への関連も認められており、競技能力向上には身体的能力のみならず、呼吸機能、心理的能力の評価も必要であると考えている。</p><p>重度脳性麻痺選手を対象に実施した呼吸機能評価と遠投距離との関連性、そして競技時の心理面に着目した研究結果を報告するとともに、現在行っているIMTについて併せて紹介する。</p>

収録刊行物

  • スポーツ理学療法学

    スポーツ理学療法学 1 (Supplement), S16-S16, 2021

    一般社団法人 日本スポーツ理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014115883726336
  • DOI
    10.57495/jjspt.1.supplement_s16
  • ISSN
    27584356
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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