死者の夢についての考察

書誌事項

タイトル別名
  • A Study of Dreams about the Dead

説明

本稿ではまず,これまでの夢研究を概観する.そこでは深層心理学の無意識を前提とした夢分析から,脳科学による睡眠と夢との関連や記憶回路から夢を解明しようとする実証研究までを取り上げ,現象学派の流れをくむ現存在分析や社会構成主義による夢の考察に収斂する.その上で本稿がテーマとするのは,死者の夢である.死者とは現実の世界では死の境界を超えた存在でありながら,夢に登場するときには生きた姿をとって現れる.社会構成主義の立場では,現実は主観的感覚の集合によって構成されたものであり一つの物語であることを示しているが,夢もまた現実と等しく固有な世界であることを認め,そこに登場する人物の人格を認めて,その主観的感覚に焦点化する.こうした立場から考えると,死者の夢とは,死者を媒介として現実のみならず,異界ともつながっているのであり,超越性の発露であることが示されてくる.後半では,死者の夢に関する3つの具体事例を取り上げ,それぞれを超越性の観点から考察している.

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