若年女性の冷え感に及ぼす安静時および食後の熱産生と末梢血流量・外殻温度の関係について

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抄録

<p>(緒言)</p><p> 若年期における冷えの自覚は,その後の妊娠・出産期に非常に大きな影響を及ぼすことが考えられる.本研究では,冷えに関するケアについて検討するにあたり,「若年女性の冷え感は,熱産生が低いために,深部体温は保持されるものの末梢体温が低下し,その自覚症状としてあらわれる.」との仮説を立て,熱産生に着目し検討することと,冷え感の自覚の有無による食後の熱産生の変化を代謝量,抹消血流量・外殻温度から検討ことを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p> 冷え感の自覚の有無は「冷え症」調査用問診票(寺澤変法)を用いた.安静時代謝量は,12時間の絶食後,朝に大学に来校し,30分間座位安静を保ったのち,ダグラスバッグ法により呼気を10分間採取した.呼気ガス分析計(アルコシステム,AR-1)を用いて酸素及び二酸化炭素の濃度を分析した.ガスメーター(品川製作所,DC-5)にて換気量を測定した.これらのデータから酸素摂取量と二酸化炭素排出量を算出し,Weirの換算式によりエネルギーに換算して体重あたりの安静時代謝量(kcal/kg/min)を算出した.計測は食前と食後60分に行った.血流量は座位安静を保ち,人差し指に測定器(日本光電,MLV-2301)を取り付け,約2分間測定した.血流量測定の結果から交神経機能と副交感神経機能についても併せて算出した.計測は食前,食後30分,食後60分に行った.外殻温度は座位安静を保ち,手の表面に測定器(カスタム,NIR-01)を1秒程度近づけ測定した.計測は食前,食後30分,食後60分に行った.食事は,朝食として,おにぎり2個(ツナマヨとサケ)とだし巻き玉子,水(適宜)を提供した.エネルギーは525kcalだった.データは,平均±標準偏差で示した.</p><p>(結果)</p><p> 対象者は7名だった.冷え感の自覚のあるものが4名(以下,あり群),自覚のないものが3名(以下,なし群)だった.あり群は年齢20.8±0.5歳,身長158.3±3.9cm,体重49.9±1.9kg,体脂肪率25.9±3.8%,除脂肪量36.98±1.13kg,脂肪量12.98±2.32kg,筋肉量34.89±1.04kg,BMI20.0±1.3kg/m2,なし群は年齢20.3±0.6歳,身長162.7±4.3cm,体重59.0±2.9kg,体脂肪率30.6±0.5%,除脂肪量40.93±1.76kg,脂肪量18.07±1.16kg,筋肉量38.52±1.59kg,BMI22.3±0.6kg/m2だった.あり群はなし群に比べ,体重と体脂肪率,除脂肪量,脂肪量,筋肉量,BMIが低い傾向にあった.体重あたりの安静時代謝量は,あり群の食前が0.015±0.001kcal/kg/min,食後が0.017±0.002kcal/kg/min,なし群の食前が0.014±0.000kcal/kg/min 食後が0.016±0.001kcal/kg/minだった.安静時代謝量の食後の増加量は,両群とも0.002±0.001kcal/kg/minだった.血流量と交感神経機能,副交感神経機能,外殻温度からは,冷え感の自覚の有無による違いを見つけることができなかった.</p><p>(考察)</p><p> 冷え感の有無により,筋肉量や脂肪量などの体組成に違いがみられ,冷え感には体組成が影響する可能性が示唆された.これは複数の先行研究においても同様の結果が得られている.日本人若年女性12名を対象にした体表面積あたりの安静時代謝量の比較では,冷えの訴えの強いものは弱いものと比べ安静時代謝量が低いと報告されている1).しかし,今回の対象者において同様の結果は得られなかった.今回の食事内容においては,あり群はなし群ともに同程度の熱産生をしていることが示唆された.今後は,対象者数を増やして検討を行いたいと考えている.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会 の承認を得て行った(申請番号2016-031).</p>

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