高齢者の転倒予測のシステム化

DOI
  • 三和 真人
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 雄賀 多聡
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 竹内 弥彦
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 大谷 拓哉
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 藤尾 公哉
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 小川 真司
    公立福生病院リハビリテーション科
  • 真壁 寿
    山形県立保健医療大学理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • ─ 6分間歩行のフラクタル解析より ─

抄録

<p>(緒言)</p><p> ヒトの歩行には一定のリズムを刻んでいるようで,実際は刻んでいない.心拍数リズムと同様な非規則性(非周期運動)が存在する.高齢者の歩行の顕著な1つの例を考えると,関節変形,筋萎縮や立位姿勢の異常など様々な転倒要因を包含していることが考えられる.特に体重心を前後移動させる推進力減少に加え,脊柱の柔軟性(左右・上下方向)が低下し,移動能力に必要な運動機能低下が亢進するものと考えられる.本研究は,歩行時の脊柱柔軟性がLocomotor(運搬能力)である下肢運動機能の基で効率的な運動を果たすのか否かを分析して,高齢者の転倒予防に繋げることにある.</p><p> 今回の目的は,本研究は歩行時に第7頸椎に貼付した加速度計から左右(Y方向)と垂直(Z方向)の移動距離変化(変動距離)から分析することとした.</p><p>(研究方法)</p><p> 対象は,ほぼ週5回,30分以上の散歩を行っている健常高齢者11人(平均73.5±3.6歳),2週間に1度の健康指導体操を受けている方である.</p><p> 測定課題は,無線加速度計(Trigno EMG System, Delsys Inc. US)を第7頸椎に貼付し,1辺が10m正方形外周を自己の快適歩行速度で6分間歩行するものとした.Y方向とZ方向のPeak値の時間間隔を算出と,加速度計の基準値時間で積分して頸椎の変動距離の2つを求めた.時間間隔はCSVファイルとして保存し,モノフラクタル解析ソフト(カオス解析プログラム,TAOS研究所,東京)でフーリエ変換(FFT)させた後,自己相似性(フラクタル性)を求めた.またPeak to Peakによる変動距離の平均を求めた. 対照群(Control群)は健常若年者5人(平均20.3±1.3歳)である.採用基準は,両群とも整形外科疾患,神経系疾患のないこととした.高齢者の6分間歩行時の歩行速度を算出し,Control群と比較した.また600歩(通常100歩/分の6倍)前後のY方向とZ方向のPeak値を算出し,Control群の変動距離平均値データと比較した.有意水準を5%とした.</p><p>(結果)</p><p> 高齢者群の歩行速度は1.3±0.6m/s,Control群の歩行速度1.6±0.7m/sよりも遅いが,明らかな差はみられなかった.</p><p> 歩行時の加速度信号Peak値のモノフラクタル解析では,高齢者群の自己相似性が0.55~0.78と一定のリズムを刻み,Control群と差はみられなかった.</p><p> 一方,高齢者群のY方向の変動距離は2.6±0.9cmとKilleen(2017)の約3cmを示した数値とほぼ同様の結果であり,彼らの研究を支持する結果であった1).またControl 群の1.5±0.8cmよりも変動(左右頸椎のぶれ)が大きいことが示された(p<0.05).高齢者群のZ方向の変動距離は,Y方向と逆に,Z方向は1.4±0.5cmで,Control群の2.5±1.1cmより小さかった(p<0.05).</p><p>(考察)</p><p> 対照群とControl群で歩行速度に差がないことから,Center of Gravityの安定性の低下がY方向の変動距離を大きくすることの否定される結果となった.しかし,高齢者の歩行速度を高めれば,Z方向の変動距離が大きくなり,転倒が生じる可能性あると考えられる.今回,前後方向(X方向)の計算をしてないが,歩行の不安定性の要因に「歩行速度」が考えられる.つまり,Y方向とZ方向の変動距離がX方向の推進力に関連することが考えられる.今後の課題として,KilleenのMinimum toe clearanceが快適歩行速度では年代別に関係なく,一定であることより,Locomotorの上のPassengerである頭部・体幹と転倒の関係を明らかにする必要があると考える.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は,研究等倫理審査委員会の承認(2017-1) を得て実施した.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014128337435520
  • DOI
    10.24624/cpu.10.1_1_113
  • ISSN
    24335533
    18849326
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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