多学科連携によるサービスラーニングプログラムの試作

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抄録

<p>(緒言)</p><p> 「サービスラーニング」は,学生が地域に出向き,学んできた知識・技能を活かしたサービズ活動(ボランティア)を実施することにより,自らの学びの再構築や市民としての責任を感じとる実践教育である.1990年以降,アメリカ各地の大学で実践され,わが国では国際基督教大学が先駆的・体系的に科目を充実させているとの報告がある.サービスラーニングの定義や評価は未だ統一されていないものの,近年,力を入れる大学が増加している(櫻井正成 立命館高等教育研究第7号).</p><p> 「健康づくりのプロフェッショナル」育成を目的とする本学の学生は,「生活者としての住民を支援する」考え方や健康支援の手法を学んでいく.健康教育の方法論は,指導・操作型から,人々の自由意思の尊重とエンパワーメント型へと転換している.それは,専門家が判断する「最も望ましい姿」を指導したり強要したりすることではなく,住民自身が自主的で主体的に参加することの大切さと,好ましい健康習慣を維持する大切さを自覚する「支援」である.本研究では,この住民の健康支援を学修している学生に対し,学びを実践的に活かす地域でのフィールドを設定する.</p><p> 本研究の目的は,本学でまだ実施されていない,地域に出向く「多学科連携によるサービスラーニングプログラム」を試作し,そのプログラムがもたらす学生の学修状況やプログラム(運営含む)の問題点を明らかにすることである.また,数年後の本学カリキュラム改正において「自由科目」として取り入れられることを目指した.</p><p>(研究方法)</p><p> 多学科で構成された学生グループ(支援者 以下学生)に,協力施設の高齢者(被支援者 以下対象者 継続的に健康調査に参加している者)の健康調査の結果をもとに,個別のカンファレンスを実施させた.後日,対象者個々の意識化を促す,グループ形式での健康支援を施した.健康支援の主な内容は,対象者の日ごろの健康意識や健康行動を傾聴することとした.健康支援後の,対象者個々の感想と学生の学び・感想を,自由記述を含めたアンケートで調査した.</p><p>(結果)</p><p> 対象者は学生12名(看護学科2年4名 栄養学科3年3名 歯科衛生学科3年2名 理学療法学2年1名 作業療法学3年2名)と高齢者19名(男性11名 平均年齢75.6±4.0歳)であった.高齢者の17名が服薬治療中であった.「対話」は,多学科で構成される学生3名と高齢者5名で構成されるグループ形式とした.事後のアンケートで,学生・高齢者の3名を除き,プログラムは「満足,やや満足できるもの」と答えた.高齢者全員が「話し合いの中で自分にとって役に立つことはあった,ややあった」と答え,学生全員が「今回のプログラムで,対象者への理解が深まった,やや深まった」と答えた.しかし,自由記述において,高齢者は学生からの話を聴きたい要望が多く(6名),学生からは「話すことで意識化させる健康支援と話を聴き引出す医療従事者の姿勢の養成」といったプログラムの目的が把握できていない感想が多かった(6名).高齢者は全員が「このプログラムはぜひあったほうがいい,あった方がいい」と返答したが,学生4名は「あまりなくてもよい」と答えた.</p><p>(考察)</p><p> 健康支援の手法とした,「対象者の話を聴く」ことの重要性は,本プロプログラム内のレクチャーのみでは,学生に十分に理解させることができなかった.本プログラムの目的を,学生・教員とも確認理解するために,事前学習にかける時間と工夫が必要であることが示唆された.なお,本研究の取組をもとに,平成31年度より特色科目の自由科目として「社会実習(ボランティア活動)」を設置することとなった.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の 承認(申請番号2017-033)を得て実施された.</p>

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