グリア細胞変容の理解から紐解くがん悪液質病態の増悪化機構

DOI
  • 須田 雪明
    星薬大・薬理 国立がん研・がん患者病態生理研究分野
  • 葛巻 直子
    星薬大・薬理 国立がん研・がん患者病態生理研究分野
  • 成田 年
    星薬大・薬理 国立がん研・がん患者病態生理研究分野

抄録

<p>がん悪液質は、がん患者の晩期において多く認められ、体重減少や食欲不振、サルコペニア、うつや不安の亢進といった心身の脆弱化に加え、急激な生存不能状態を惹起させるため、治療法の開発が急務である。がん悪液質病態を統合的に理解するためには、がん組織や腫瘍微小環境などの変容ばかりに囚われず、脳を仲介する円環的な末梢-脳-末梢ネットワーク異常による全身病態増悪化機構の解析が求められる。がん悪液質病態下では、血中において炎症性サイトカインの過剰分泌が引き起こされ、全身性炎症状態を呈することが知られている。また、こうした全身性炎症反応には、腸内細菌叢の変化や腸管バリア機能の破綻を伴い、腸管から流出される内毒素である LPS の増加が一部関与していると考えられる。こうした末梢組織における炎症性シグナルは、血液脳関門が比較的ルーズな視床下部領域に伝達され、炎症を伴った脳機能低下を引き起こすことにより、円環的に全身症状の悪化を加速させる可能性が想定される。一方、脳内において神経細胞を取り巻くように豊富に存在するグリア細胞は、免疫担当細胞のようにサイトカインやケモカイン等の発現を誘導、遊離、受容することで神経系細胞間相互作用を調節する役割を担っている。さらに、グリア細胞は、神経細胞とは異なり、増殖能を有していることから、末梢からの炎症性シグナル入力に応答し、形態や機能を動的に変化させ、脳内でのシグナル増幅に寄与する可能性が推察される。そこで、本講演では、がん悪液質病態下における視床下部内グリア細胞変容を中心とした末梢-脳-末梢円環的ネットワーク破綻による全身病態増悪化機構について、細胞分取技術を応用したグリア細胞特異的遺伝子発現変動解析や脳内メタボローム解析など様々なアプローチにより得られた最新の知見について紹介する。</p>

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014128338995072
  • DOI
    10.34597/ngpssuppl.2023.1.0_ag-5
  • ISSN
    24367567
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ