適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力育成を目指した小学校理科授業デザインの開発と評価:証拠の認識的理解に着目して

書誌事項

タイトル別名
  • The Development and Evaluation of Instructional Design for Elementary Science to Improve on Students’ Argument Construction Skills Using Multiple Pieces of Evidence: Focusing on Epistemic Understanding of Evidence

抄録

<p>本研究の目的は,既存の授業デザインをベースとし,「アーギュメントにおける証拠の認識的理解の支援」に着目することで,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力の育成を既存の授業デザインよりもさらに支援できるような新たな授業デザインの開発と評価を行うことであった。新たな授業デザインは,次の2点から構成された。(1)我が国の小学生がアーギュメント構成において適切かつ十分な証拠を利用できるようになるために,どのような内容の認識的理解の支援を目指せばよいのかという「学習目標」に関するデザイン,(2)学習目標を達成するために,小学校の理科授業にいかなる学習活動を導入すればよいのかという「学習活動」に関するデザイン。これらの授業デザインを小学校第4学年「金属,水,空気と温度」に適用し,66名の学習者を対象に計17時間の授業を実施した。授業デザインを評価するために,アーギュメント課題と証拠の認識的理解に関する課題を単元前後に実施した。その結果,アーギュメント構成における証拠の適切性と十分性はそれぞれ向上したが,証拠の十分性において十全なレベルに至らなかった学習者が一定数見られた。これらの結果から,本授業デザインは,既存の授業デザインと同程度の有効性に留まることが明らかとなった。その一方で,アーギュメント課題と証拠の認識的理解に関する課題の関連を検討したところ,証拠の認識的理解の「アーギュメントにおける主張と証拠の関係性」はアーギュメント構成における証拠の十分性と有意な正の相関が見られるという結果なども得られた。これらの結果から,証拠の十分性に関する認識的理解をより強力に支援する授業デザインとして改善されることにより,本授業デザインは,適切かつ十分な証拠を利用するアーギュメント構成能力の育成を既存の授業デザインよりもさらに支援できる可能性を有していることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 理科教育学研究

    理科教育学研究 63 (3), 629-644, 2023-03-31

    一般社団法人 日本理科教育学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (5)*注記

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