独立成分分析に基づく低温熱水活動の推移

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  • Process of hydrothermal activity estimated from independent component analysis

抄録

<p>海底火山活動に伴う熱水活動の中でも,熱水の温度が300℃を越える高温熱水活動は資源的価値の高い硫化物鉱床を伴うため,多くの研究がなされている [1].一方,高温熱水活動域の周辺や小規模火山では低温(<150℃)の熱水から鉄マンガン (Fe-Mn) 酸化物が析出する低温熱水活動が確認されているが,活動プロセスや高温熱水活動との関係など未解明な部分は多い.しかし,海底熱水活動の熱水循環システム全体を理解するためには,低温熱水活動を含めた議論が必要不可欠である.</p><p>低温熱水活動の中でも,低温熱水が堆積物中を海底面方向へ上方拡散する (diffuse flow) 活動形式の場合,堆積物-海水境界付近でFe-Mn酸化物が析出するため,(しばしば熱水変質した) 堆積物や火山砕屑物を多量に含む熱水性Fe-Mn酸化物が形成する [2].また,活動初期に形成したFe-Mn酸化物がキャップロックとなって海底面からの熱水の流出を妨げるため,Fe-Mn酸化物は堆積物中で下方向へと成長してゆく事が知られている [3].キャップロックによって金属を含む熱水の流出が妨げられた結果,Fe-Mn酸化物が効率よく金属を取り込み,Co, Ni, Cuの合計濃度が4%を超えた事例も報告されている [4].このように,キャップロックの形成過程や,それによってせき止められる熱水の性質推定は,堆積物に覆われた海底面で活動する熱水活動を理解するうえで非常に重要である.</p><p>本研究では,東北日本沖で採取された熱水性Fe-Mn酸化物から,低温熱水活動の活動推移の推定を行った.試料の鉱物・化学組成から,水-岩石反応が200℃以下であり,Fe-Mn酸化物が低温熱水から析出したことが明らかになった.また,変質した砕屑物の周囲をFe-Mn酸化物が固める構造を持つことから,堆積物中を拡散した熱水からFe-Mn酸化物が析出したと考えられる.</p><p>試料の研磨片に対してµXRFを用いた元素マッピング分析を行い,得られたデータに対して独立成分分析を実施した.独立成分分析とは,複数の独立した起源に由来する信号が混ざり合った観測データから原信号を復元する統計解析手法である.元素マッピングデータに対して独立成分分析を実施することで地球化学的特徴と組織構造の双方から形成過程の推定が可能となる.独立成分分析の結果,主にMn酸化物からなるキャップロックが形成した後に,熱水の性質もしくは堆積場の環境が変化した事でFe酸化物が析出していた事が明らかになった.</p><p>今後,様々な海域の熱水性Fe-Mn酸化物に本研究の手法を適用して比較することで,低温熱水活動の特徴や有用金属を濃集する条件などを明らかにできる可能性がある.</p><p></p><p>引用文献 [1] German & Seyfried 2014, Treatise on Geochemistry, 191-233. [2] Hein et al. 2008, J. Geophys. Res., 113(B8). [3] Yamaoka et al. 2017, Ore Geol. Rev., 114-125. [4] Pelleter et al. 2017, Ore Geol. Rev., 126-146.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014183333698432
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_156
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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