新潟県佐渡島中新統中山層の火山灰ジルコンU-Pb年代測定および珪藻化石層序年代との比較
書誌事項
- タイトル別名
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- Zircon U-Pb Dating of Tuff Layers from the Miocene Nakayama Formation on Sado Island in Niigata Prefecture and Comparison with Diatom Biostratigraphy
- 「日本地質学会優秀ポスター賞」受賞
抄録
<p>堆積物を用いて古環境復元を行う際に最も重要となるのが年代決定である。そして、中新統珪藻質堆積物において最も時間解像度の高い生層序の1つに珪藻化石層序がある。しかしながら、生層序とは、別の方法で年代決定がなされたモデル堆積物(多くの場合は海洋掘削コア)での産出記録をもとにした間接的な年代決定法である。そのため、その年代値はモデル堆積物の年代モデルに強く影響され、さらに海域の違いに伴う優占種の違いによって年代値に偏差を生じる可能性を含んでいる。そこで、本研究では既に珪藻化石層序が報告されている珪藻質堆積物を対象とし、そこに狭在する火山灰層の堆積年代と比較した。火山灰層の堆積年代決定には火山灰層から分離したジルコンのU-Pb年代測定法を用いた。ジルコンのU-Pb年代系は堆積以後の変質に対して頑強であり、また近年の標準物質の確立(Iwano et al., 2013)や年代分析法の改良に伴い、比較的若い中新世の試料に対しても正確かつ高精度な年代値の取得が可能である。</p><p>調査を行ったのは、新潟県佐渡島に分布する中新統中山層であり、柳沢 & 渡辺 (2017)によって珪藻化石層序が報告されている。今回は2枚の火山灰層(TBA-3, WKA-5)からジルコン粒子を抽出し、U-Pb年代測定を行った。その結果、それぞれ10.874±0.065 Ma、6.68±0.18 Maという年代値(2σ)を得た。また、これら2枚の火山灰層は、Yanagisawa & Akiba (1998)の珪藻化石帯区分においてそれぞれNPD5C帯とNPD7A帯に属する(柳沢 & 渡辺, 2017)。</p><p>次に、これらを珪藻化石層序年代と比較するために、珪藻化石層序年代の誤差範囲の計算を行った。この誤差範囲の計算は、珪藻化石層序の根拠となっているモデル堆積物においてその年代モデルの誤差範囲を計算し、それを珪藻化石層序年代に反映させることで導出した。モデル堆積物の年代モデルの誤差範囲の計算にはUndatable (Lougheed & Obrochta, 2019)を用いた。この誤差範囲を含んだ珪藻化石層序年代と、今回得られたジルコンU-Pb年代を比較したところ、それらは2σの誤差範囲内で一致し、本調査地域において珪藻化石層序年代を放射年代により裏付けることができた。したがって、当該地域において珪藻化石層序年代が信頼に値するものである可能性が高い。このように、生層序のような相対年代をU-Pb年代のような数値年代と比較し、その確度を評価していくことは、対象とする堆積物においてより統一的でより正確で間違いのない年代モデルを築いていくために重要なことであると考える。</p><p>以下、発展的内容であるが、今回調査を行った一部のセクションにおいて、全岩主要元素組成を連続的に分析することで得られた元素の周期的な変動を用いて、上記の年代制約と組み合わせることで、サイクル層序を構築することができた。これは、陸上に露出する日本海中新統珪藻質堆積物としては、異例の時間解像度を持つ年代モデルであり、今後の古環境研究への活用がより一層期待される。</p><p></p><p>参考文献</p><p>Iwano, H., Orihashi, Y., Hirata, T., Ogasawara, M., Danhara, T., Horie, K., Hasebe, N., Sueoka, S., Tamura, A., Hayasaka, Y., Katsube, A., Ito, H., Tani, K., Kimura, J., Chang, Q., Kouchi, Y., Haruta, Y., & Yamamoto, K. (2013) An inter-laboratory evaluation of OD-3 zircon for use as a secondary U-Pb dating standard. Island Arc, 22, 382-394.</p><p>Lougheed, B. C. & Obrochta, S. P. (2019) A rapid, deterministic age-depth modeling routine for geological sequences with inherent depth uncertainty. Paleoceanogr. Paleoclimatol., 34, 122-133.</p><p>Yanagisawa, Y. & Akiba, F. (1998) Refined Neogene diatom biostratigraphy for the northwest Pacific around Japan, with an introduction of code numbers for selected diatom biohorizons. Jour. Geol. Soc. Japan, 104, 395-414.</p><p>柳沢幸夫 & 渡辺真人 (2017) 大佐渡地域南部に分布する新第三系の海生珪藻化石層序. 地質調査研究報告, 68, 287-339.</p>
収録刊行物
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- 日本地質学会学術大会講演要旨
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日本地質学会学術大会講演要旨 2022 (0), 331-, 2022
一般社団法人 日本地質学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390014183333799168
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- ISSN
- 21876665
- 13483935
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可