韓国の錦山地域における古原生代花崗片麻岩のジルコン・モナズ石の地質年代学的・地球化学的な研究

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  • Geochronological and geochemical study on zircon and monazite of Paleoproterozoic granitic gneiss in the Geumsan area, Korea

抄録

<p>背景と目的</p><p></p><p>韓国の先カンブリア時代の基盤岩は、主に北西部の京畿地塊と南東部の嶺南地塊に分布する。両地塊の境界は、三畳紀に形成され始めたと考えられているSouth Korean Tectonic Line(SKTL)である [1]。ジュラ紀の花崗岩類の貫入などが原因で、地表でのSKTLの詳細な位置は不明である。</p><p></p><p>筆頭著者らは、韓国の錦山地域のジュラ紀花崗岩中の花崗片麻岩のジルコンU–Pb年代を測定した [2]。ジルコンからはコア・マントル・リムが確認された。コアからは約2.5 Gaのマグマ固結年代が得られた。マントル(Th/U比 < 0.1)からはディスコーダントなデータが得られ、コンコーディア曲線との交点は約1.89 Gaと174 ± 74 Ma(共に変成年代)となった。ただ、マントルは波動累帯構造を示すため、火成ジルコンの可能性がある。ジュラ紀の変成作用に伴って過成長したと思われるリムは測定できていない。韓国において、ジュラ紀の700℃以上の接触変成作用の報告はわずかで(例えば [3])、ジュラ紀の広域変成作用は認知されていない。従って、ジュラ紀のコンコーダントなU–Pb年代を示す過成長ジルコンの報告はわずかであり(例えば [4])、希土類元素の挙動の詳細は不明である。</p><p></p><p>錦山地域にはSKTLが位置すると想定される [2, 5]。錦山地域周辺の嶺南地塊では古原生代の岩石中のモナズ石にペルム紀~三畳紀の変成年代が見られないが [6]、京畿地塊では見られる [7] ため、モナズ石の変成年代からSKTLの位置を推定できる可能性がある。</p><p></p><p>そこで本研究では、[2] と同一の試料(花崗片麻岩)から、以下の不明点を探究した。</p><p></p><p>■ マグマ固結年代と変成年代</p><p>■ ジルコンの希土類元素の挙動</p><p>■ SKTLの位置</p><p></p><p>国立極地研究所での分析手法</p><p></p><p>モナズ石とジルコンを分離した。EPMAでモナズ石のBSE像の撮影とTh–U–total Pb年代の測定を行った。電子顕微鏡でジルコンのCL像を撮影し、SHRIMPでジルコンのU–Pb年代と希土類元素濃度を測定した。先カンブリア時代の年代については「ディスコーダンス < 5%」のものをコンコーダントとして207Pb/206Pb年代を用いて議論する。顕生代の年代については「コンコーディア曲線と誤差範囲で交わる場合」をコンコーダントとして206Pb/238U年代を用いて議論する。</p><p></p><p>結果と考察</p><p></p><p>■ ジルコンU–Pb年代に基づくマグマ固結年代と変成年代</p><p>コアは約3480–2100 Ma、マントルは約1917–1896 Ma、リムは約180–170 Ma(例外的に1粒子のみ約230 Ma)である。太古代のコアが初めて得られたため、約2.5 Gaのコアの年代をマグマ固結年代だと解釈した [2] は誤りだと判明した。よって、コンコーダントなマントルの加重平均年代(約1.9 Ga)がマグマ固結年代だと解釈できる。マントルのディスコーディアの下方交点(約290 Ma)は、[2] とは対照的にペルム紀の変成作用を示唆する。ジュラ紀のリムの加重平均年代(175.6 ± 0.9 Ma)は、ジュラ紀の高温の変成作用を示唆する。</p><p></p><p>■ ジルコンの希土類元素とTh/U比に基づく鉱物共生</p><p>ジルコンのコアよりも、マントルとジュラ紀のリムの方が、Ceの正異常が小さく、Th/U比が低い(< 0.1)。CeとThはジルコンよりもモナズ石に多く含まれるため、マグマ固結時と変成作用時におけるジルコンとモナズ石の共生が示唆される。</p><p></p><p>■ モナズ石・ジルコンの変成年代に基づくSKTLの位置</p><p>約1845–158 Maの幅広い年代を示すモナズ石が1つ得られたが、その他のモナズ石の年代は約244–147 Maの範囲内である。モナズ石の変成年代分布の最大の極大値は約173 Maである。モナズ石の変成年代分布はペルム紀~三畳紀の極大値をもたないが、前述の通りジルコンのマントルはペルム紀の変成作用を示唆するため、SKTLの位置については今後さらなる検討が必要である。</p><p></p><p>文献</p><p></p><p>[1] Chough et al., 2000, Earth Sci. Rev., 52, 175–235.</p><p>[2] 岩水ほか, 2021, 地質雑, 127, 121–129.</p><p>[3] Kim et al., 2020, Precambrian Res., 346, 105739.</p><p>[4] Cheong et al., 2015, Ore Geol. Rev., 71, 99–115.</p><p>[5] Hong & Choi, 1978, Geological Map of Geumsan Sheet, 1: 50,000, Korea Res. Inst. Geosci. Miner. Resour., Seoul.</p><p>[6] Oh et al., 2013, J. Petrol. Soc. Korea, 22, 117–135.</p><p>[7] Horie et al., 2009, Geosci. J., 13, 205–215.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014183333912704
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_369
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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