統計解析を用いた河川の水質及び流域特性の把握

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タイトル別名
  • Understanding of River Water Quality and Watershed Characteristics Using Statistical Analysis
  • -A Case Study at the Asakawa River-
  • -多摩川水系浅川を事例として-

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p> 河川水は流下に伴い地質や人為の影響を受けて変化する。特定の流域の水質及び特性を把握するためには現地調査と水質分析だけでなく、これらを解釈するための手法を組み合わせた総合的な研究が必要である。東京都の八王子市、日野市を流下する浅川は、多摩川の主要な支流のひとつであり、比較的短い区間に山林から都市域までが分布しており、流下に伴う河川水質の変化を観察するのに適したフィールドであると言える。本研究では現地観測とサンプリングした河川水の水質分析に加え、流域内の地理情報を用いて統計解析を行うことで、集水域単位の人口、土地利用、地質が水質にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とする。 </p><p>Ⅱ 研究方法  </p><p>2020年6月~2021年9月にかけて月に1回の頻度で浅川流域内の34地点において河川水のサンプリングを実施し、現地で水温、電気伝導度、水素イオン濃度の計測を行った。サンプリングした河川水のうち、2020年7月、10月、2021年1月、9月のものはShimazu社製のイオンクロマトグラフィーを用いて主要溶存成分の計測を行った。 観測を行った34地点の集水域を、GISを用いてDSM(数値地表モデル)から切り出し、各地点の集水域における人口、土地利用種別面積割合、地質種別面積割合、平均傾斜を算出した。集水域ごとの人口の算出には国勢調査(2015年)を、土地利用種別面積割合、地質種別面積割合の算出には国土数値情報を、平均傾斜の算出及び集水域の切り出しには宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供の30m解像度DSM(全球数値地表モデル)を用いた。  得られた水質のデータ及び集水域ごとの人口、土地利用種別面積割合、地質種別面積割合、平均傾斜を変数として、各変数間の相関関係数の算出と多変量解析のひとつであるクラスター分析(k-means法、Ward法)を行い、流域内において類似した特性を持つ集水域のグループを作成し、その要因について考察した。 </p><p>Ⅲ 結果と考察  </p><p>集水域ごとの地質種別の中で、電気伝導度との相関係数が正の値で最も高かったのはロームで0.86であった。これはロームの分布する地域は比較的平坦な地域が多く、多くの人口が分布することに加え、ロームに含まれる火山性の物質が溶出することによると思われる。反対に砂岩・泥岩互層は負の値で最も相関係数が高く(-0.88)、この地質種の多く分布する上流域では電気伝導度は低い傾向にあった。土地利用種別割合で最も電気伝導度との相関係数が高かったのは建物用地であり、0.84であった。逆に森林の割合が高い集水域では電気伝導度は低い傾向にあり、相関係数は-0.88であった。  水質変数を用いたクラスター分析では上流と中・下流域では分類されるクラスターが異なり、水質の成分が異なることが分かる。また、同じ上流の山間部の地点でも、浅川本流と主要な支流の南浅川では分類されるクラスターが違う場合があり、両者の水質成分が異なることが分かる。これは南浅川では上流においても比較的人口密度が高いことが影響しているためと思われる。 </p><p>Ⅳ おわりに </p><p> 人口、地質、土地利用は上流域と下流域で大きく異なっており、水質にも同様の傾向がみられ、クラスター分析の結果も同様に上流と下流では分類されるクラスターが異なった。より詳細な水質に影響を与える変数を探るためには今回実施した手法以外にも因果解析等の手法を取り入れ、さらに解析を進める必要がある。 </p><p>参考文献 小田理人・小寺浩二(2022):多摩川水系浅川の水質に関する水文地理学的研究(4).日本地理学会発表要旨集,2022s(0),56.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014194595853184
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_113
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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