国内の外国人学校数とその変動

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  • The Number of Schools for foreigners in Japan and its Changes

抄録

<p>1. 外国人の子どもの教育と外国人学校 移民の主体は労働者のみならず,その家族である子どもも移動する.移動の経験を背景に有し,母語や文化的背景が多様な外国人の子どもの教育は,公教育でのサポートの不十分さなど多くの課題を抱えている.そのため,彼らの教育はボランティアなどによる日本語教室や学習支援教室といった,多様な学びの場によっても支えられており,これらは正規化かつ定型化されたフォーマルな教育(丸山・太田編 2013)である公教育との比較からインフォーマルな学びの場として捉えることができる.外国人学校は,学校として定型化された学びの場ではあるものの,日本の公教育制度との関係にみる正規化の度合いからインフォーマル教育としての特徴も有しており,外国人の子どもを主たる対象とした普通教育の機能も果たしている. 近年,文科省『外国人の子供の就学状況等調査』の結果により,就学実態が把握されていない子どもが数多くいることが明らかになったが,実際に不就学である子どもがどれほどいるかは依然として明らかにされていない.その原因には,そもそも国内の外国人学校数が把握されていないために,そこで学ぶ子どもの人数が調査できないことがあり,外国人の子どもの教育実態把握に向けて,外国人学校などのインフォーマルな学びの場への注目が求められる. 2. 研究目的 地理学では岩本(2006)によるブラジル人学校の調査があるものの,外国人学校数をめぐっては多くが対象となる地域や外国人学校の類型が限られ,かつ1時点での学校数にのみ言及している.朴(2008)など,例外的に全国の外国人学校数について言及した場合であっても,いかなる資料を用いたのかが整理されていないことにより,外国人学校数を調査するのに調査者が方法を都度検討しなおす必要が生じている.そこで,本発表では2018年度と2021年度の2回にわたって実施した国内の外国人学校数の調査方法と結果を報告し,この期間の学校数の変動を検討する. </p><p>3. 調査方法 地域・国によって,外国人学校がいかなる学校的施設を指すかは異なるが,本調査では日本の公教育の外側にあるが海外政府や認証団体等の認可を得ているといった,日本の義務教育ないし高等学校相当の教育を受けたと認められうる学校とした.調査にあたっては,都道府県による各種学校一覧,各認証団体webサイト等を利用し,各学校のwebサイトおよびfacebookで活動実態も可能な限り把握した.また,主たる対象となる子どもや学校が依拠する認可を踏まえて,インターナショナルスクール(以下,IS)を含む「欧米系」,朝鮮学校などの「オールドカマー系」,ブラジル人学校などの「南米系」,「その他」に分類している. </p><p>4. 結果  2021年に文科省が実施した,外国人学校の保健衛生環境に関する調査で対象校とされた外国人学校は161校であった.だが本調査の結果によれば,実際にはこれより多くの学校数が確認され,日本の教育行政も外国人学校を把握しきれていないことが明らかとなった.学校数の変動については2018年度から2021年度のあいだに大きな変化はみられなかったものの,類型ごとの学校数の変動をみると,日本人児童生徒の入学を念頭に置いたISの新設がみられ,南米系学校の閉校ないし「消滅」 が起きていることも確認された.  </p><p> 外国人学校に対しては公的支援が少ないことから, その経営の安定には保護者からの授業料の納入が非常に重要となる.結果でみられた南米系学校の減少は,在日ブラジル人の不安定な雇用状況ともある程度つながりをもっていることも予想される. また,外国人の子どもの教育機会,さらには日本の公教育で対象とされる「日本人」の教育機会を広く考察するうえでの経験的な証拠として,国内の外国人学校数を継続的に実施することの重要性が示唆された.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014194595870336
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_183
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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